『食べる女』で女性たちを取り巻く“食”と“性” 沢尻エリカ、前田敦子らの“食べる”から読み解く
年齢も、職業も、恋愛に対する考え方も、人生における価値観も異なる8人の女たちが、おいしいものを心置きなく、好きなだけ食べる。“女の本音満載の宴”を通して、現代に生きる女たちの“今”を描く映画『食べる女』が公開を迎えた。
物語は、主演の小泉今日子演じる餅月敦子(通称:トン子)の家に集う同じ町で暮らす女たちにフォーカスしながら進む。沢尻エリカ演じる小麦田圭子(通称ドド)や、前田敦子演じる白子多実子、果てにはドドや多実子らが行くバーに来ていた女性として広瀬アリス演じる本津あかりが登場する。群像劇としてそれぞれの女性の“食”にまつわる人生を描くが、そこにいる女性はトン子と関係があったりなかったり様々だ。トン子を軸に物語は進むが、深く描かれるのはトン子の周りで暮らすドドや多実子たち。トン子はその生活を見守り、そしてエッセイとして書き留めていくのだった。
胃袋を掴まれたドドの場合
本作は“食事のシーン”と“ベッドシーン”が特筆されるべきポイントだろう。そして描かれる女性の人生が、一辺倒ではなく様々なバリエーションがあり、キャラクターとしての深さがあることが挙げられる。独身女性の中でもキャリアがあり、年齢も若くないドドはいわゆる結婚適齢期であろう。しかしドドはマンションを買い、1人での人生を悠々自適に謳歌していた。ある日、タナベ(ユースケ・サンタマリア)と出会うまでは。ドドにとっての食はタナベの作る手の込んだ魚料理だ。食事を作ってもらい、共にするうちに身体の関係まで許してしまう。最後まではっきりとした関係性は提示されないが、タナベがドドに好意を寄せていることは明白だ。そして胃袋を掴まれたドドはその好意を跳ね除けることができなかった。沢尻はこの役で、タナベを跳ね除けられない自分との葛藤を静かに演じる。感情的でなく、クールなドドは沢尻の顔立ちとも相性の良い役である。「かわいらしい」印象の10代から、「クールで艶っぽい」30代の沢尻は本作で先輩女優と肩を並べ、存在感を放った。