山田孝之と野田洋次郎の不思議なつながり 『dele』が投げかけた“2度目の死”
圭司は決して、ワクワクした表情は見せない。追い求めているものが、失踪した母親の遺体ということもあるだろう。しかし、無愛想な表情を浮かべているにも関わらず、圭司から冒険を楽しむ子供のような一面が感じられる。圭司が見せる表情の素直さも魅力的だ。祐太郎がスプーン曲げに成功したときには大声をあげて驚いた。最後の絵の場所にたどり着いたとき、場所の不気味さに不安な表情や言動を見せた圭司にくすりとさせられる。いつもは冷静沈着な圭司が、祐太郎より幼く感じる。この圭司の子供のような一面は、亡くなった日暮の抱えてきた孤独や不安を際立たせる演出にもなっていた。
日暮の遺品は母親の居場所を言い当てるものだった。母親の白骨化した遺体がそこで見つかり、数十年ぶりに母親は娘の待つ自宅へ戻った。数十年前、日暮はわざと間違った絵を描くことで、事実を少女に伝えないことを決める。母親は失踪したのではなく、父親によって殺害されていたのだ。圭司と祐太郎は、母親の遺体とともに見つかった名刺を父親に渡す。罪悪感を抱えながら生きてきた父親に対する圭司の口調は、いつも通りぶっきらぼうだ。しかし、ぶっきらぼうな口調ではあるものの、圭司は父親の罪を責めているわけではない。日暮は「あの判断は間違っていなかったはずだ」と、少女に事実を伝えなかったことを自ら選んでいた。それを理解している圭司は故人の思いを尊重し、父親に娘や孫の幸せを考えながら生きるよう諭すようだった。日暮の真相を追っていたときのような子供らしさは、このときの圭司の表情にない。今までの依頼者にしてきたような姿勢を、憧れの人に向けようとする姿があった。
物語終盤、圭司は日暮の死についてこう話す。
「俺たちが覚えておけばいい。2度目の死は訪れない」
死んだ後、忘れ去られることを2度目の死と表現した日暮。そんな彼を覚えておこうと言う圭司の表情には、やはり憧れの人に対する尊敬の念があった。人との接触を突き放すような印象も与えてきた圭司だが、本当は誰よりも人の気持ちを大切にしているように思える。無邪気さと真摯さと、無愛想な表情の中からそれらを感じさせる山田の演技力に圧倒される回だった。
登場シーンは少ないが、日暮を演じた野田の存在感も素晴らしかった。冒頭のモノローグから感じられる日暮の苦悩。圭司と祐太郎の前に現れる姿には、どこか異質な雰囲気があった。山田と野田が直接接するシーンはないのだが、劇中2人がつながっているかのように感じる、不思議な印象があった。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
金曜ナイトドラマ『dele(ディーリー)』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~深夜0:15放送(※一部地域を除く)
出演:山田孝之、菅田将暉、麻生久美子
原案・パイロット脚本:本多孝好
脚本:本多孝好、金城一紀、瀧本智行、青島武、渡辺雄介、徳永富彦
音楽: 岩崎太整、DJ MITSU THE BEATS
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)、瀧本智行
撮影:今村圭佑、榊原直記
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://dele.life/