アメコミ・ヒーロー映画に訪れた“多様化”の背景 イスラム教徒や韓国系のヒーローが仲間入り
しかし、アメコミというのはかなり以前から、コミックの方ではダイバーシティなことを意識して盛り込んできたのです。スパイダーマンは今でこそアメコミ・ヒーロー界を代表するキャラですが、当時大人の男のヒーローが主流だったアメコミ界においてティーンの視点を持ち込みました。X-MENは人類に差別されるミュータントという設定を用いて人種問題・マイノリティ問題を取り上げました。
女性超人を”スーパーヒロイン”といわず”スーパーヒーローウーマン”という言い方をすることもあり、女性が男性と同等に強い存在であることをアピールしていました。そもそもアメコミのスーパーヒーローの第1号であるスーパーマンは、アメリカ人ではなく宇宙からの移民です。マーベル・コミックの立役者であり、多くのヒーローを生み出したスタン・リー氏が「どんな奴がいたっていい、どんな奴だって輝き・活躍出来るチャンスがあるのだ。世界はそのくらい広い。だから一つの価値観で、自分とは違うものを弾圧・排除しようとするのが一番よくないんだ」という趣旨の発言をしていました。
僕はこの”誰にでも活躍できる場所がある”というのが、アメコミ・ヒーロー物の一番素敵なところで、だからこそ長年にわたって人の心を惹きつけてきたんだと思います。その精神がようやく映画の方にも浸透してきたのではないでしょうか?
■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter
■公開情報
『アントマン&ワスプ』
8月31日(金)全国公開
監督:ペイトン・リード
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、マイケル・ダグラス、マイケル・ペーニャ、ハナ・ジョン=カーメン、ローレンス・フィッシュバーン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2018
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/antman-wasp.html