玉城ティナ、小関裕太ら期待の若手俳優が勢揃い! 『わたしに××しなさい!』のチャレンジ精神
一方で、雪菜をめぐる3人の男子はそれぞれに違ったキャラクター性を持ちながらも絶妙なバランスを保つ。爽やかイケメンという猫を被りながらも、性根は腹黒い時雨を演じる小関裕太といえば、2014年に放送されたドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)でのトランスジェンダーのコスメ役の印象が強いが、昨年公開された『覆面系ノイズ』しかり本作でも、ちょっぴりダークなイケメン役が様になる。
比較的ナチュラルな演技をこなす主要キャスト5人の中でも、小関の演技からはしっかりと“演技をしている”という雰囲気が出されているように見受けられる。それは演じているキャラクターの二面的な部分を表現していることでもあり、長いキャリアや舞台などで積み重ねた演技力ということでもあろう。彼のような役者は、確実に大成する。
また、晶を演じる劇団EXILEの佐藤寛太は『恋と嘘』でのイメージからは正反対の純朴な出で立ちで登場。甘いルックスと背格好が小関と似通っているだけに内面や笑顔の作り方の差がハッキリと現れていて興味深く、さらにインパクト大の金髪で氷雨役を演じた金子大地も『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)のマロ役とはまるで違う雰囲気を放つ。
もう1人重要な存在を忘れてはいけない。時雨をめぐって雪菜に敵意をむき出しにするライバル格・マミを演じる山田杏奈だ。『咲-Saki-』の染谷まこ役から、先日公開された初主演作『ミスミソウ』での怪演など、作品を追うごとに大化けしていく彼女。時雨に対する好意を前面に出しながら、苛立ちと警戒心を表情と態度でしっかりとあらわにし、野菜に八つ当たりする。彼女のキャラクターが雪菜と正反対になっていることで全体の調和が取れているだけに、もっと出番があればいいのにというのが正直なところだ。
ティーン向けの映画のキャスティングとなれば、比較的既存の人気を優先するきらいがある中で、本作は人気と実績両面で伸び盛りの若手だけをすくい取っているように見える。しかも、彼ら主要キャスト以外ちらりと登場する編集者を除けばほぼ全員がエキストラという、極めてミニマムな世界が構築されている。実質的に5人の若手俳優だけで約100分の映画を完成させなければならないのだから、その実力がまざまざと証明される場になっているチャレンジングな作品だ。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■公開情報
『わたしに××しなさい!』
新宿バルト9ほか全国公開中
出演:玉城ティナ、小関裕太、佐藤寛太、山田杏奈、金子大地
原作:遠山えま『わたしに××しなさい!』(講談社『KC なかよし』刊)
監督・脚本:山本透
脚本:北川亜矢子
(c)遠山えま/講談社 (c)2018「わたしに××しなさい!」製作委員会
公式サイト:batsu-shina.jp