豊川悦司、永野芽郁たちを導く“師匠”に 『半分、青い。』秋風役のブレない両面性

 迂闊だが失敗を恐れないヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)が、一大発明を成し遂げるまでの物語を描く連続ドラマ小説『半分、青い。』(NHK総合)。現在放送中の東京編では、漫画家デビューを果たした鈴愛の奮闘ぶりが見どころである。そんな東京編になくてはならない存在が、鈴愛の漫画の師匠である秋風羽織(豊川悦司)だ。

 秋風は多数の人気作品を生み出したプロの少女漫画家だが、その正体は偏屈なオッサン漫画家である。東京へやってきたばかりの鈴愛と衝突することもあったが、漫画に一切の妥協を許さない姿勢が鈴愛を成長させていった。

 秋風を演じる豊川は、1989年から俳優として活躍。『半分、青い。』の舞台となる90年代の映画やドラマに数多く出演している。1995年に放送されたドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS系)では耳の不自由な青年画家を演じ、多くの視聴者を虜にした。ミステリアスな印象と抜群の演技力で独特の存在感を発揮する豊川だが、数ある作品で演じてきたクールな役どころとは違い、漫画に対してすさまじい熱を放つ秋風を“怪演”している。

 秋風は「興奮すると河内弁が出てしまう」「タメになる話を語っていると言葉を遮られ、最後まで話ができない」など、コミカルな役回りでもある。しかし注目すべきは、秋風が立ち上げた漫画家養成塾「秋風塾」の塾生に向ける熱いメッセージや想いにある。

 鈴愛やユーコ(清野菜名)、ボクテ(志尊淳)にアシスタントの仕事を託しながら、漫画家になるためのノウハウを熱く教える秋風。秋風の漫画にかける情熱を、豊川はコミカルな演技を維持しつつも真摯に演じる。秋風の想いに答えようと懸命に漫画と向き合う鈴愛たちとの関係には、胸を打たれるものがある。鈴愛が失恋や律(佐藤健)との別れに涙したときには「泣いてもいいから描け。漫画にしてみろ」と熱弁し、ボクテが鈴愛の作品を盗作した際には「お前は、楡野のアイデアをパクったばかりか、『神様のメモ』の息の根を止めたんだ」と怒りを見せた。

 秋風の嘘偽りのない言葉は弟子たちの心に響く。例えばボクテは鈴愛の作品を盗作したことで破門されたが、彼は“師匠”として秋風を慕い続ける。秋風もまた、破門を撤回することはなかったが、彼の才能を認め、影ながら応援し続けていた。

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