ブライアン・クランストンが考える“戦争と映画” 「映画はそもそも反戦的であるべきだと思う」
『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイターが監督を務めた映画『30年後の同窓会』が6月8日より公開される。本作は、妻に先立たれたラリー・“ドク”・シェパード(スティーヴ・カレル)が、30年間音信不通だった友人サル・ニーロン(ブライアン・クランストン)とリチャード・ミューラー牧師(ローレンス・フィッシュバーン)と再会し、戦死した息子を連れ帰るロードムービー。旅の途中で3人は、彼らの人生に影を落とす30年前の“ある事件”の記憶を呼び覚ます。
今回リアルサウンド映画部では、サル・ニーロン役を務めたブライアン・クランストンに電話インタビュー。本作が描いた戦争についてや、『ブレイキング・バッド』で遅咲きのブレイクを果たした彼による30年前の自分へのメッセージなどを語ってもらった。
「私が演じたサルは、人知れず孤独に対する恐怖を抱えている」
ーー3人の中でもサルは、1番ユニークで物語を進める舵取りのようなキャラクターでしたね。
ブライアン・クランストン(以下、クランストン):リンクレイター監督から出演してほしいと言われて脚本を読んだのだけど、どの役に配役されるのかは知らなかったんだ。私はサル役がやりたかったから、後に監督に「サル役を演じてほしい」と言われたときはとても嬉しかった。すごく好きなキャラクターなんだ。表面的には横柄で、自己中心的で、無骨で、快楽ばかり求めているように見える。それはそれで全部本当のことなんだけど、それは彼なりのPTSDとの付き合い方なんだとわかったよ。つまり彼は感覚を麻痺させることで長年痛みに対処してきた。バーで真っ先に喧嘩をする男だし、麻薬にもすぐ手を出すし、女を口説くのも速い。その一方で友達を真っ先に助けるのもサルなんだ。「何したい? よし、その話に乗った」など言ってくれる。そういう気高さを持ち合わせている。だからサルはどうしようもないところもあるんだけど、真なる友でもあるんだ。
ーーサルは、ドーナツやキャンディー、ピザなど劇中1人だけずっと物を食べたり飲んでいたりしていた役でもありました。
クランストン:あれは意図的にやったことなんだ。サルは自分の快楽を求める男だから、キャンディーでもなんでもタダでもらえるものはもらうし、冷めたピザやぬるいビールなど、置いてあるものはなんでも食べる。キャラクター描写として、とても面白いコンセプトだと思って演技に取り入れることにした。でも撮影がいったん始まってしまうと、しょっちゅう食べていなければならなかったから大変だったよ! でも始めちゃったものを途中で変えるわけには行かないんだよね。
ーー2003年が舞台の本作で、今ではアナログな携帯電話に感動するシーンが印象的です。15年前の時代に生きるサルを演じた感触はどうでしたか?
クランストン:実感として、社会の意識は今とそれほど変わらないけれど、9.11が起きた直後だったから不安が蔓延していたし、世界秩序も変わった。でもテクノロジーは当然ながらまだ進んでおらず、スマホなどなかったし、今では珍しいどころか生活必需品になったね。私も今こうやってスマホを使って話しているし、スケジュール管理にも目覚ましにも使う。昔は腕時計、タイプライター、目覚まし時計、iPodなどバラバラに使っていたよね。当時携帯電話は目新しいものだった。あのシーンは楽しい撮影だったよ。数回リハーサルして感覚を掴み、その後ピッツバーグのロケ地へ赴いたのだけど、(監督は)自由に演じるゆとりを与えてくれたよ。
ーースティーヴ・カレルとローレンス・フィッシュバーンとは本当に30年以上の付き合いのようで、特に列車の中で下ネタも交えながらの戦地での思い出を語るシーンはこちらも笑ってしまいました(笑)。
クランストン:あのシーンの体の動きはアドリブだった。出たとこ勝負だったから、ローレンス・フィッシュバーンの脚に乗っかることになるとは思わなかったよ(笑)。サルは結局イタズラっ子な少年で、話し上手でもある。楽しいことを徹底的に楽しむのが彼の対処プロセスだ。また人を楽しませることができるのも自分の魅力の一つだと思っているし、周りを巻き込むタイプでもある。酔っ払いで周りにも飲むことを強制する人っているでしょう? それは周りを付き合わせれば独りにならなくて済むからで、サルにもそういうところがあるのだと思う。その反面、人知れず孤独に対する恐怖を抱えているんだ。