『半分、青い。』秋風から弟子たちに受け継がれた情熱 第8週は豊川悦司が主役に
「朝ドラムービングサーズデイ」。そう例えたのは、『あさイチ』(NHK総合)で朝ドラ受けを続けるMC、博多華丸・大吉の博多華丸。彼が言うには、朝ドラは木曜日にことが動き、金曜日に焦らされ、土曜日に解決するのだという。『半分、青い。』(NHK総合)第8週「助けたい!」はまさに華丸の考察通りにストーリーが進んでいった。ドラマのヒロインは楡野鈴愛(永野芽郁)であるが、第8週は秋風羽織(豊川悦司)がメインの週であったと言えるだろう。
鈴愛がネームを捨てたと勘違いした漫画『さよならは私から言う』を、秋風が“遺作”と呼んでいたこと、さらには急なファンの前でのトークショー、秋風漫画塾の開講、新連載の話を断ったことなど、徐々にパズルのピースが揃っていくことでマネージャーの菱本(井川遥)は彼の癌の再発を疑う。秋風はただ、名作をこの世に残すのではなく、自分自身、つまり漫画を描くテクニックや漫画への姿勢、情熱をボクテ(志尊淳)やユーコ(清野菜名)、鈴愛に受け継がせたかったのだ。
第7週で菱本は鈴愛という存在が秋風の心を動かしている、創作のいい刺激になると嬉しそうに話していた。偏屈でいて、大人っぽくも子供っぽくもある秋風は、その性根は変わらないまでも、少し丸くなった印象がある。家族がいない秋風は、ペットの犬たちだけが友達だった。先に天国へ旅立っていく恐怖からもう飼うことはなくなっていたが、突如プライベートルームに現れた犬たちのパネル。手紙による鈴愛の感謝の言葉に「アホらしい。酔いもさめるっちゅうねん」となぜか関西弁混じりで照れて見せるも、少しずつ心の距離は縮まっていたように思える。
そして、本名の美濃権太とゆかりのある地、岐阜の鈴愛の実家つくし食堂へと足を運んだ際も、仲睦まじい楡野家を目の前にし、家族の温かさに「ここは桃源郷のようだ」と一言。死期が近いと悟り「少し、旅に出る」と置き手紙を残し、再びつくし食堂へと向かったのは、秋風にとっても岐阜が帰る場所になっていたから。30歳手前で覚悟を決め、漫画家になることを志し、遅咲きデビューした秋風は、セールスマン時代も含めて、仕事漬けの毎日。ひょんなことから辿り着いた桃源郷・つくし食堂で、秋風は団らんの一時に思わずすすり泣く。