実写版『ピーターラビット』、原作とキャラ設定を変えた理由は? ウィル・グラック監督に聞く

 映画『ピーターラビット』が5月18日から公開される。絵本『ピーターラビットのおはなし』の刊行から100年以上経っても愛され続ける同シリーズを、『ANNIE/アニー 』『小悪魔はなぜモテる?!』のウィル・グラック監督が映画化した本作。たくさんの仲間と大親友のビアとともに幸せに暮らすピーターの元に、潔癖症で動物嫌いのマクレガーが引っ越してきたことで、生活が一変してしまう。

 今回リアルサウンド映画部では、ウィル・グラック監督にインタビュー。ピーターを原作からキャラ変更した理由や、高級デパート・ハロッズを破壊するシーンの裏側などについて聞いた。

「新しい冒険をさせたかった」

ーーまず、あなたとピーターラビットの出会いを教えてください。

ウィル・グラック(以下、グラック):子供の頃は親が絵本をよく読んでくれていた。ピーターというキャラクターがとても好きで、今は自分の子供たちに本を読んであげているよ。映画化の話をもらったときに、新しい冒険をさせることができるんじゃないかと考えたんだ。でも、大きな作品になったとしてもビアトリクス・ポターのDNAを受け継いだ物語にしようと思った。サイズ感や青いジャケット姿など見た目を大事にして、壊さないよう心がけたね。

ーーとはいえ、本作のピーターは原作とギャップがあって驚きました。

グラック:原作の中のピーターは非常にシンプル。彼のお父さんはマクレガーの奥さんに殺されてパイにされてしまったことがあって、「マグレガーさんの畑にだけは、行ってはだめですよ」とお母さんに言われている。それでも庭に行って怒られるという物語だ。そこから僕たちは要素をピックアップして、やんちゃなところ、言うことを聞かないところ、いたずらっ子なところを膨らませてキャラクターを作り出していったんだ。

ーー変更した点はありましたが、原作へのリスペクトも感じる作品になっていましたね。特にイギリスの美しい風景は圧巻でした。

グラック:この映画は湖水地方で撮影を行った。実際にビアトリクス・ポターが絵を描いていたコテージのすぐ近くだったんだよ。彼女が描いた水彩画を全部張り上げて、そこから映画のシーンに組み込んでいった。庭や風景は原作を基にデザインしていったんだ。

ーーその反面、あの高級デパートのハロッズを破壊するシーンは衝撃的でしたよ。

グラック:ハロッズじゃなく、他のデパートでやるなんて考えられなかったんだ。だから許可が降りたときはとても嬉しかった。1週間、閉店時間から朝の開店時間まで場所を借りていたんだけれども、本当にしっかりとした撮影をすることができた。実は、映画にでてきたよりも、撮影ではさらに破壊しているんだ。おもちゃ売り場だけではなく、ほか10箇所くらいの売り場でいろんなものを壊していったよ。結構高いものもね(笑)。

ーーあなたは日本に住んでいた経験がありますが、どこかめちゃめちゃにしたい場所はありますか?

グラック:今回の来日で昔住んでいた場所を訪ねてみたんだけれど、どこもかしこも変わってしまっていたんだ。だからとても難しい質問だね。どこかな、アメリカ大使館かな(笑)。

ーーピーターたちのイタズラが、緻密に計算されていたのも面白かったです。

グラック:ピーターが行うイタズラは、できるだけ庭や家などどこにでもあるものを使ったんだ。先にイタズラのアイデアを思い浮かべるんじゃなくて、状況や何が小道具で使えるかを見て考えていったよ。

ーーオリジナルソングも印象的だったのですが、ピーター役にジェームズ・コーデンを起用したのは、彼が歌も得意だったからなのですか?

グラック:今回は、3、4曲オリジナルの楽曲が使われているけど、ミュージカル映画ではないから、突然歌ったり踊ったりは変だなと思ったんだ。だから始めから歌のシーンを考えていたわけじゃないよ。でも、ジェームズはすごく歌が上手い人だから、歌わせたいなと思って入れたんだ。

ーーCG加工前のピーターたちがいない状態の撮影が、どのように進んだのかが気になります。

グラック:まず普通の実写を撮るように撮影するんだ。もちろん役者は動物たちが全くいない状態で演技をするから、時々僕が動物たちの声を出したよ。だからとても大変だった。それからアニメーターたちが、ジェームズ・コーデンやマーゴット・ロビーたちボイスキャストの声が入った映像から、俳優の動きを確認しながらCGを作っていったね。

関連記事