視聴者さえも煙に巻く七変化! 『コンフィデンスマンJP』長澤まさみの女優魂がすごい
今期の“月9”枠を射止めた 『コンフィデンスマンJP』が放送開始より飛ばしまくっている。本作はいわゆる“コンゲーム”を題材にしたドラマ。信用詐欺、取り込み詐欺など、あの手この手でターゲットを騙し、二転三転するストーリーを楽しむジャンルで、有名どころとしてはハリウッド映画『オーシャンズ11』シリーズがその典型だ。
毎度、「目に見えるものが真実とは限らない。コンフィデンスマンの世界へようこそ」というナレーションで始まる本作は、長澤まさみ扮するダー子と、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)ら詐欺師チームの活躍を描いたコメディ。ターゲットとなるのはマフィアまがいの財団のボスや強引なリゾート開発でのし上がる女社長ら、成功の裏で手段を選ばない悪行を重ねてきた人物ばかりというのもあり、世直し的な痛快さがドラマの肝となっている。が、それ以上にスリリングなのが長澤まさみ、その人だ。
本作で長澤が演じるのは、詐欺チームのリーダー、ダー子。どんな相手も罠にかける天才的な頭脳と、ほぼ一夜漬けで難解な専門知識をマスターしてしまう抜群の集中力を持ちながら、天然かついい加減な性格で底抜けにポジティブという憎めないキャラクターだ。ターゲットの選定から、計画の立案、ボクちゃんやリチャードへの指示出し、そして数多いる協力者(子猫ちゃん)の手配までをひとりでこなしてしまうあたり、とんでもなく有能な人物には違いないが、その素性は本名すらも謎。今後の展開の中で明かされていくのかも大いに気になるところである。この、開けっぴろげなのに謎めいている、言わば視聴者さえも煙に巻くキャラクターこそ、他でもない長澤の規格外の演技力の賜物と言える。
長澤まさみは、00年代以降の日本の映画、ドラマシーンにおいてさまざまな足跡を残してきた女優だ。東宝のシンデレラガールというエリート街道からデビューし、『世界の中心で、愛を叫ぶ』で日本中を虜にした。正統派女優の道を進むかと思われた彼女のひとつの転機となったのは倉本聰脚本のドラマ『優しい時間』(フジテレビ系)ではなかっただろうか。不幸な生い立ちから心に不安定さを抱えた女性という難役を見事乗り切り、その後『モテキ』で持ち前のプロポーションを活かした健康的なセクシーさを、『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』では奔放な気っ風の良さも惜しげもなく晒してきた。それでいて近年の『海街diary』『嘘を愛する女』で等身大の女性像を演じても、埋もれることなく確かな輝きを放っている。