欲張りこそ若さの特権! 『ミッドナイト・ランナー』は青春暴力アクションコメディの快作だ

加藤よしきの『ミッドナイト・ランナー』評

 しかし、映画はそのまま陰惨な方向に向かわず、クライマックスで再び転調する。今度は観ていて気持ちがよい爽快なアクション映画へ変わるのだ。いろいろあった末、2人は犯罪組織に殴り込みをかける。既に犯罪組織の極悪っぷりに、この時点で観客の殴り込み欲求は最高潮(ちゃんとトレーニングシーンと完全武装シーンを踏む丁寧な仕事ぶりも光る)。絶妙のタイミングでの殴り込みだから、こうなればアクション映画の勝ちパターンだ。韓国映画お得意の大乱闘では、警察大学で学んだ武術と備品を使って、チンピラ軍団をバタバタと倒していく。もちろんザコ戦の後にはラスボスが控えており、ローキック野郎との死闘は見応え十分。打撃中心のローキック野郎に対し、主人公サイドは組み技&警棒と、この上なく警官らしいスタイルで戦いを挑む。なお、筆者も家の前でヤクザと警官のドリームマッチが発生したことがあるが、そのときも警官は柔道でヤクザを制圧していた(腕絡みをかけていたと記憶している)。

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 そして痛快活劇の締めは、ホロっとくる人情劇。ベタと言えばベタ、分かっちゃいるけど胸にくるエンディングで映画は終わる。最も大切な要素をエンドロール中(言わば後日譚)に入れてくるのも粋な構成だ。笑いあり涙ありとは、まさにこのこと。青春映画、暴力映画、悪趣味映画、アクション映画、人情映画、ついでに妙にセクシーなライティングで魅せる筋トレシーンと言った野郎脱ぎ映画(byキシオカタカシさん)の要素まで盛り込んだエンターテインメントのフルコース。欲張りだが、その欲張りさこそ若さの特権、そう言わんばかりの青春暴力アクションコメディの快作だ。もっとも、そんなジャンルはこの映画以外にあまりないが、それはまた別の話である。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『ミッドナイト・ランナー』
3月24日(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか順次公開
出演:パク・ソジュン、カン・ハヌル、パク・ハソン、ソン・ドンイル、イ・ホジョン
監督・脚本:キム・ジュファン
配給:クロックワークス
2017年/韓国/108分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
(c)2017 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
公式サイト:http://klockworx-asia.com/midnightrunner/

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