2PMテギョンの演技は救いとなるーー『時間回廊の殺人』で見せた“元祖演技ドル”の風格

 また、この映画は、ミヒの母親としての在り方も描かれている。ミヒは子供と夫を殺した罪で捕まってはいたが、「母親」として子供を思う気持ちは強かった。韓国で「母親」を題材にした作品といえば、『母なる証明』(2009年)がある。同作では、強すぎる母性愛は恐怖も感じさせるものであると描いていたが、この映画に描かれる母の愛とは果たしてどんなものか。そこも大きな見どころのひとつだ。

 スリラー作品には人間同士の憎悪が付き物で、もちろんこの作品にもそれは出てくる。しかし、意外にも最後まで観ると、どこか気持ちがすっと鎮まるようなところがあった。それはスリラーの物語を観て怖がって叫んで、そして最後に緊張感から解放されてスッキリしたというたぐいのものではなく、静かに落ち着くような気持ちに近いものだった。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『時間回廊の殺人』
3月17日(土)シネマート新宿・心斎橋ほかにて全国順次ロードショー
出演:キム・ユンジン、オク・テギョン(2PM)、チョ・ジェユン
監督:イム・デウン
脚本:チャン・ジェヒョン
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
英題:House of the Disappeared
2017年/韓国映画/韓国語/100分/シネマスコープ/字幕:矢口理恵
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公式サイト:jikankairou.com

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