『リメンバー・ミー』共同監督が語る、作品における音楽の役割 「キャラクターの心情が表現されている」

 ピクサー・アニメーション・スタジオ最新作『リメンバー・ミー』が3月16日に公開される。本作は、カラフルな“死者の国”に迷い込んだミュージシャンを夢見る少年ミゲルと、彼が出会ったガイコツのヘクターとの冒険の模様を描いたファンタジー・アドベンチャー。第90回アカデミー賞では、長編アニメーション賞と主題歌賞の2部門で受賞を果たした。今回リアルサウンド映画部では、本作の共同監督を務めたエイドリアン・モリーナ監督にインタビュー。ストーリーや音楽を軸に、本作の魅力について話を訊いた。

「ストーリーをしっかり作るというのが一番の要」

ーー監督を務めたリー・アンクリッチとはどのように役割分担をして制作を行ったのでしょう?

エイドリアン・モリーナ共同監督(以下、モリーナ):どの制作過程でも互いに補い合う関係で携わっていたんだ。僕は元々ストーリーアーティストだった経緯もあって、ストーリーテリングを主に担当した。ストーリー上の問題を解決していくために、いろいろな材料やアイデアを提供していく。反対にリーは編集マンとしてのバックグラウンドを持っていたから、時間の流れや音楽、声など、作品には欠かせない要素をキュレーションして組み合わせていくという過程を担当していたんだ。僕が生の材料をどんどん作り、リーがそれらを組み合わせて、最終的なストーリーにしていく。その作業をしていく中で、僕たち2人はとてもいい組み合わせだと感じたよ。

ーーピクサーでは1つの作品の制作過程において、その4分の3の時間をストーリー作りにつぎ込むということを『スタジオ設立30周年記念 ピクサー展』で知って驚きました。

モリーナ:『リメンバー・ミー』も同じくらいかかったね。この映画を作るのに6年を費やしたのだけれど、アニメーションの制作を始めたのが封切り日の1年半くらい前だったから、4年半はストーリー作りの時間だった。最初の段階はメキシコでのリサーチに費やし、その後いろいろなストーリーのバージョンを作って、暫定的なものをスタジオに見せ、フィードバックをもらう。やはりストーリーをしっかり作るというのが一番の要になっているんだ。これまでの作品も同じで、主人公がどんなチャレンジに直面していくのかという旅路について考えるとき、それが非常に面白いものであってほしいし、観客が引き込まれるものであってほしい。様々な物語のバージョンを作って、トライ&エラーを繰り返しながら、どんどんストーリーを強くしていくわけなんだ。

ーーこれまで監督が携わってきたピクサー作品と本作とではどんな違いがありましたか?

モリーナ:僕はこれまで『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』などのシリーズものの制作に携わってきたんだけど、本作が初めてのオリジナル映画なんだ。初めてキャラクターを作り上げ、キャストとのアンサンブルや作り上げるダイナミックスを考えるのが非常に面白いということを実感したよ。また、初めて実際にある文化や伝統に基づいた話を作るということにも取り組んでいる。史実に基づいているからたくさんリサーチをするわけなんだけれども、世界中の人々が観て元の文化も理解できるようにするために、リサーチで得たことをストーリーに組み込んでいったんだ。今回は、“祖先を忘れない”ということがハイライトになっているよ。

ーーメキシコをという国をモチーフにした経緯にはどのようなきっかけがあったのでしょう。

モリーナ:はじめはリーが“死者の日”をテーマにした物語が作りたいと言ったことが始まりだった。“死者の日”というホリデーはメキシコのものだから、メキシコを舞台にするは非常に自然な選択だったんだ。リサーチを進めていく中で知り得たメキシコのさまざまな歴史や文化を映画の中に盛り込んでいき、エキサイティングなものに仕上げていった。ストーリーの舞台としてもメキシコは素晴らしいし、家族や祖先を忘れないというテーマにもつながっているよ。

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