年末企画:田近昌也の「2017年 年間ベスト海外ドラマ TOP10」 “多様性”をめぐる議論が1歩先に進んだ

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。海外ドラマの場合は2017年に日本国内で放送・配信された新作ドラマ(ストリーミング、シーズン2以降含む)から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第10回の選者は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院プロデューサー科を修了後、メジャースタジオの長編映画企画開発部門などで経験を積んだ田近昌也。(編集部)

1. 『13の理由』シーズン1
2. 『マスター・オブ・ゼロ』シーズン2
3. 『THIS IS US 36歳、これから』 シーズン1
4. 『ナルコス』シーズン3
5. 『ザ・クラウン』シーズン1
6. 『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン2
7. 『LEFTOVERS/残された世界』シーズン3
8. 『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン7
9. 『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン1
10. 『マインドハンター』シーズン1

 NetflixやアマゾンなどのSVOD(定額制VOD)プラットフォームの台頭とともにハリウッドにもたらされたテレビの黄金期は、依然として続いている。ハリウッドでは、原作ものが大半を占める長編映画に比べ、テレビシリーズはまだオリジナル作品の入り込む余地があると言われているが、それでも少し面白そうな本を見かけて調べてみると、それらがすでに製作会社の企画開発中ということは珍しくない。そんな中製作される作品としては、LGBTQ、エスニック・マイノリティといった社会的なテーマが強く押し出されたものが多かった過去数年に比べ、今年はそういったテーマはより深いレベルへと達し、「多様性」をめぐる議論が1歩先に進んだことを印象づけるものであった。

 とはいえ、面白くなくてはやはりそれは「エンターテインメント」とは呼べない。下で述べる4作品は、選んだ10作品の中でも、特に筆者が食い入るように「ビンジ・ウォッチ」してしまったタイトルである。

1.『13の理由』シーズン1

 同名のYA小説を原作とした本作は、いじめを苦に自殺した女子高生ハンナが残した7本のカセットテープと、彼女に恋心を抱いていた同級生のクレイを中心に話が進む。1話ごとにテープの1面におさめられた各登場人物の秘密を暴露する中毒度の高い構成だけでなく、様々なマイノリティ達を、ステレオタイプに留まらない多面的な描き方をした点でも大きな意味を持つ。クリエーター陣は「このストーリーはまだハンナの視点でしか描かれていない」と語るが、これはシーズン中にテープで秘密をバラされた登場人物たちがよく言っていた台詞でもあり、現在シーズン2の製作が進んでいる。

2.『マスター・オブ・ゼロ』シーズン2

 インド系コメディアンのアジズ・アンサリがクリエーターとなり、監督・脚本、そして主演までもつとめるこの作品は、エスニックマイノリティとしてニューヨークで生きることのリアルを、軽いタッチで描いたコメディ。主人公デフの幼なじみでレズビアンであるデニス役を演るリナ・ウェイスが、黒人女性として初めてプライムタイム・エミー賞のコメディ作品部門脚本賞を受賞した。ちなみに、主人公がアジア人の親は子供への愛情表現が控え目であるという点で、白人の彼女の家に行った際「今までの全人生で自分の親からハグされた回数よりも多くハグされた」と話すエピソードに強く共感できるのは筆者だけではないはずだ。

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