年末企画:小野寺系の「2017年 年間ベスト映画TOP10」
ほか、志向性の高い撮影と色彩の編集などによって、個人的な体験や時間感覚を豊かに表現した『ムーンライト』、人間の感情を繊細に写し取って生きることの意味を追求した『しあわせな人生の選択』、いまの時代にショーを見ること、見せることの意義を描いた『SING/シング』、ヒーロー作品のなかで介護問題を扱うという挑戦をした『LOGAN/ローガン』、未踏の地へと前進する勇気を与えてくれる『ドリーム』など、人間ドラマの秀作を選出した。
自由な表現、そして人間や社会などへの深い理解。「映画」の定義が曖昧になっていくなかでも、その根本的な価値を忘れなければ「映画」の精神は受け継がれていくはずだ。イラン政府の弾圧によって映画を撮ることを禁止されたジャファル・パナヒ監督が、タクシーの防犯カメラを使って「映画ではない」と言い張れる作品、『人生タクシー』を発表できたように、またそこで映画への愛が一輪の薔薇によって示されたように、かたちは変化するにせよ、映画というものはまだまだ残り続けていくだろう。
TOP10で取り上げた作品のレビュー
・ブラッド・ピット主演『マリアンヌ』は、名画『カサブランカ』の美しい“偽物”だ
・あふれ出るアニメ本来の魔法の力ーー湯浅政明監督『夜明け告げるルーのうた』の真価を探る
・これは“自分のための映画”だーーマイノリティ描く『ムーンライト』に共感を抱く理由
・大林宣彦監督の圧倒的な執念ーー『花筐/HANAGATAMI』の幻惑的で自由な映画世界
・『LOGAN/ローガン』は“名作映画”の領域にーー本物のドラマに宿るアメリカの魂
・映画『ドリーム』はハリウッドの新しい波の象徴となるーー黒人女性たちが成し遂げた偉業
・『人生タクシー』は“映画”ではない? 特異な表現を生んだ、イラン社会の現実
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■配信情報
Netflixオリジナル映画『オクジャ/okja』
Netflixにて配信中
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、ジョン・ロンソン
出演:アン・ソヒョン、ティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノ、ジャンカルロ・エスポジート、スティーヴン・ユァン、リリー・コリンズ、デヴォン・ボスティック、ダニエル・ヘンシュオール、シャーリー・ヘンダーソン、ピョン・ヒボン
製作:プランBエンターテインメント、ルイス・ピクチャーズ、ケイト・ストリート・ピクチャー・カンパニー
製作協力:Netflix
Netflix:https://www.netflix.com/jp/