『ブレードランナー 2049』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が語る、リドリー・スコットの存在と音楽担当変更の背景

 「音楽については映画のために決断が必要だった」

ーー音楽についても聞かせてください。本作の音楽はもともと『プリズナーズ』『ボーダーライン』『メッセージ』でタッグを組んできたヨハン・ヨハンソンの予定でしたが、公開直前に降板し、結果的にベンジャミン・ウォルフィッシュとハンス・ジマーが音楽を手がけています。この背景について教えてもらえますか。

ヴィルヌーヴ:まず第一に言わなければいけないのは、ヨハン・ヨハンソンの音楽は本当に素晴らしいということだ。とても美しい声の持ち主であり、映画音楽制作においても非常に優秀。ただ、芸術は予想できないもので、ときには“変革”が必要なときもある。当初は僕自身もヨハンとの仕事をとても楽しみにしていたのだけれど、映画の製作を進めていくなかで、『ブレードランナー』の音楽を手がけたヴァンゲリスの音楽に近づけないとこの映画はうまくいかないと思ったんだ。

ーーヨハン・ヨハンソンの音楽はヴァンゲリスとは遠かったと。

ヴィルヌーヴ:ヨハンは非常に強いアイデンティティを持っているから、ヴァンゲリスの音楽とは離れていってしまった。これは決して簡単な変更ではなかったけれど、映画のためには決断が必要だったんだ。僕にとって、映画作りはときに“フランケンシュタイン”のように感じることがある。自分自身が作っているわけではあるけれど、映画自体に命が吹き込まれ、次第に意思を持っていくようになる。映画のほうが何かを要求してきて、監督である僕が映画に従わなければならなくなるんだ。そういうことがあって、今回は結果的にベンジャミン・ウォルフィッシュとハンス・ジマーに音楽をお願いすることにした。彼らが今回作ってくれた音楽は、今までの僕の映画のなかでもっとも素晴らしいスコアのひとつだと思う。2人は映画が要求していることに応えてくれたから、とても感謝しているよ。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『ブレードランナー 2049』
10月27日(金)全国ロードショー
製作総指揮:リドリー・スコット
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、ロビン・ライト、ジャレッド・レト、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、カーラ・ジュリ、マッケンジー・デイヴィス、バーカッド・アブディ、デイヴ・バウティスタ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.bladerunner2049.jp/

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