大森南朋が語る、念願の『アウトレイジ 最終章』出演への思い 「僕にとって本当に宝物」
北野武監督最新作『アウトレイジ 最終章』が10月7日に公開される。『アウトレイジ』シリーズ最新作にして完結編となる本作。日本と韓国を舞台に、日本最大勢力の暴力団組織となった花菱会、日韓に強大な影響力を持つ大物フィクサー率いる張グループ、花菱会の配下に成り下がった山王会、彼らを執拗に追う警察、そして全てを清算する機会をうかがう主人公・大友らが入り乱れた、全面戦争の模様が描かれる。
リアルサウンド映画部では、ビートたけし扮する主人公・大友を慕い、彼とともに暴走を巻き起こす市川を演じた大森南朋にインタビュー。シリーズ初参加となる本作への出演にまつわるエピソードや、北野組の撮影について、さらに監督・北野武と役者・ビートたけしへの思いについてなどを語ってもらった。
「『これにかける!』という気持ちでした」
ーー今回、『アウトレイジ』シリーズには初参加となりますね。過去2作の印象について教えてください。
大森南朋(以下、大森):すごく面白いですし、現代においてこれ以上のヤクザ映画はないんじゃないかというくらいハマりました。その上、僕の知っている友人知人がたくさん出演していたので嫉妬もありつつ……。
ーー『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』の頃から出演したいと思っていたと。
大森:1作目の『アウトレイジ』の時から北野監督がヤクザ映画を撮るという噂はなんとなく耳に入っていたんです。その頃から出演したいという気持ちはありました。『ビヨンド』の時も事前に噂は聞いていまして。そして、ついに『最終章』をやるという時に、今回こそ出演できたらいいなと思っていたら、最後の最後で出演できました(笑)。
ーーそんな出演を切望していたシリーズに出演することが決定した時はどういう気持ちでしたか?
大森:それはもう「これにかける!」という気持ちでした。「この時期はもう他の仕事はしない!」と決めていました(笑)。
ーーしかも大友と行動をともにする市川という重要な役どころです。
大森:大友の手下ではありますが、いわば『最終章』における大友の相棒のような存在ですから。ということは、北野監督の側に大森南朋としていられるということでもあるので、嬉しいことこの上ないという気持ちでした。この役の重要性をひしひしと感じながら、これまでの『アウトレイジ』シリーズのことや僕を呼んでいただいた理由を考えながら、市川をどうやって映画の中に佇ませるかを考えました。
ーー大友をはじめとする他の登場人物とは違って、市川はそこまでセリフが多いわけではなく、あまり怒鳴ることもありません。
大森:他のキャラクターとは違い、いわゆるゴリゴリでオラオラのヤクザ系ではないんです。チンピラなんでしょう。セリフが少ないという点では少し悩んだこともありました。
ーー具体的にどのように?
大森:『アウトレイジ』らしい芝居であれば、なんとなくわからないこともなかったんですけど、明らかに僕の演じる市川はそうは書かれていなかったので。だからお馴染みの「バカヤロー」「コノヤロー」みたいなほうで攻めるのではなく、むしろ普通にやったほうがいいんだろうなと考えました。それが狂気に見えてくるというか。
ーー北野監督は役柄についてほとんど説明しないと言われていますが、市川に関してもそうだったんですか?
大森:はい。でもゼロではないと思います。衣装合わせの日に「こういう感じだから」というのはなんとなく言われたのですが、何を言われたかは覚えていないです(笑)。イメージは自分で作り、あとは演じていくということなので、本当に手探りでやっていく感じではありました。西田(敏行)さんをはじめ過去作にも出演していた方々は違うかもしれませんが、それはどのキャストの皆さんもそうだったと思います。
ーー何か撮影で大変だったことはありましたか?
大森:撮影の初日が済州島の裏カジノのシーンで、そこで市川と大友のやりとりがあったんです。最初は台本通りにやっていたんですけど、監督が納得できなかったみたいで、その場でやりとりの構造が全部変わったんです。それは「うわっ、変わった!」という感じで、大変というか恐かったです。初日だったこともあり、どうしたものかと。
ーー北野組の撮影は、現場で変更になることが多いとよく聞きます。
大森:そうですね。変わるというより、きっと監督の頭の中には最初から確固たるものがあると思うんです。その演出プランを僕らが聞くのが撮影当日になるということなのかなと。もちろん台本には「これこれこういうことが起きて……」というような場所とシチュエーションはしっかりと書かれてはいるのですが、その中の「これこれ」という部分が変わっていくということなんです。