ナタリー・ポートマンとタッグを組むことになった背景とは? 『プラネタリウム』監督インタビュー
ナタリー・ポートマン&リリー=ローズ・デップ共演映画『プラネタリウム』が現在公開中だ。実在したスピリチュアリズムの先駆者フォックス3姉妹と、フランスの映画プロデューサー、ベルナール・ナタンをモデルにした本作では、1930年代のパリで、死者を呼び寄せる降霊術ショーを披露し活躍する、アメリカ人スピリチュアリストのローラとケイトのバーロウ姉妹が、やり手の映画プロデューサーのコルベンと出会ったことで、2人の運命が狂い出していく模様が描かれていく。リアルサウンド映画部では、『美しき棘』『グランド・セントラル』に続き、本作が3作目の長編監督作となる、フランス人女性監督レベッカ・ズロトヴスキにインタビュー。実際にあった2つの出来事をひとつの映画に落とし込もうとした理由や、ナタリー・ポートマンとタッグを組むことになった背景などについて語ってもらった。
「幽霊が多く使われるようになったのは、映像の捉え方が変わってきているから」
ーー今回の作品の脚本は、第70回カンヌ国際映画祭で最新監督作『BPM (Beats Per Minute)』がグランプリに輝いた、ロバン・カンピヨと共同で手がけていますね。
レベッカ:ズロトヴスキ(以下、ズロトヴスキ):ロバンが他の監督のために脚本を書くことはあまりないのだけれど、彼の初監督作『奇跡の朝』を観た時から、彼の描く脚本はリアリズムとファンタジーがうまく融合していると強く感じていた。今回の『プラネタリウム』は、その要素が重要になってくる作品になるだろうと思ったから、彼にお願いすることにしたの。彼と組むことになって毎日話し合いを重ねていくなかで、彼が最も助けてくれた部分は、ストーリーにおける“秘密”をどうやって保っていくか。いわゆるミステリーの部分。作品の中で明確な答えを出そうとはしない彼の姿勢は、脚本を執筆する上で私に大きな自信をくれた。
ーーロバン・カンピヨが脚本家でもあり監督でもあるという点も大きかったのでは?
ズロトヴスキ:確かにそうね。脚本家をやっている監督とは過去にも組んだ経験があるけれど、監督をやっている脚本家はやはり違う視点から物語を捉えることができる。それに、キャストに対してどのように作品の方向性を伝えていけばいいかも理解している。そういう意味でも、彼とは共通点が多く、分かりあえる部分もたくさんあった。『奇跡の朝』は政治的な部分に心を動かされたし、家族の描き方や大勢のキャラクターをうまく描いているところが非常に優れていると感じていたの。とてもリアリスティックな方法で死者が戻ってくるという点においても、『プラネタリウム』に繋がっている作品と言える。
ーー今回の『プラネタリウム』もそうですが、オリヴィエ・アサイヤス監督の『パーショナル・ショッパー』や黒沢清監督の『ダゲレオタイプの女』など、ここ数年、フランス映画界では“死者との交流”を描くのが一種のトレンドになっているようにも感じます。
ズロトヴスキ:フランスには幽霊が溢れているからね(笑)。確かにあなたの言うとおりかもしれない。これはフランスに限ったことではないけれど、映画のテーマとして幽霊が多く使われているというのは、映像の捉え方が変わってきているのが大きいかも。35mmで撮っていた頃は、映像を実際にフィルムに収めているわけだから、“実在するもの”と考えられる。一方、デジタルで撮ったものは簡単に修正できたり変更できたりするから、“フェイク”と捉えることもできる。時代の変化にあわせて、そういうテーマの作品が増えてきているということなのではないかしら。
ーーあなたが監督した過去2作『美しき棘』『グランド・セントラル』は時代設定が明示されていませんでしたが、今回ははっきりと1930年代と設定されているためか、作風もガラリと変わった印象を受けました。
ズロトヴスキ:確かにそうかもしれないわね。でも、今回の作品も過去2作と同じスタッフと一緒にやっているから、手法は同じで、特に何かを変えようと意識していたわけではない。あなたが指摘したように、『美しき棘』と『グランド・セントラル』では、アーティスティック・ディレクションにおいて特に時代設定をせず、曖昧にしながら制作に入っていったんだけど、今回の『プラネタリウム』でもその方法自体は変わらず、アーティスティック・ディレクションからスタートしたの。ただ、最初から30年代のパリを描きたいという気持ちを強く持っていたから、それで衣装やセットデザインがより明確になっていったということ。30年代を舞台にするために現代から距離を置いて、より時代がはっきり見えるようにはなっているけど、ベースになっているものはまったく変わっていない。