ウエンツ瑛士が語る、映画『禅と骨』で得た新たな価値観 「はじめての“格好良さ”に出会えた」
「31年生きてきた中で、初めての“格好良い”を味わいました」
——ドラマパートでは、余貴美子さん、永瀬正敏さんと共演していますが、現場ではいかがでしたか。
ウエンツ:僕はそんなに映画作品に出演しているわけではないですし、これまでいわゆる“単館系”作品には出演したことがありませんでした。余さん、永瀬さんから、そういった作品の中での佇まい、一緒に映画を作っていくという感覚を学ばせていただいた気がします。本当に貴重な経験でした。
——ヘンリさんはなんでもこなす方でした。ヘンリさんのバイタリティと、マルチに活躍するウエンツさんとも共通性があるのかなと感じました。
ウエンツ:ヘンリさんはなんでも挑戦して行動している一方で、“捨ててきた”方でもあるのかなと。それをどっちなんだろう?と考えながら完成した作品を観ていました。興味が移っていく感じは一緒なのかも。僕も一貫していない部分はどうなのかなと思いつつも、いろんなことをやらせていただけることは本当に有り難いです。間違いなく、どの仕事もほかの仕事に繋がっているので。もっともっとやりたいこともいっぱいあります。
——ウエンツさん自身はハーフという出自で、自らの“居場所”というものを考えたりしたことは?
ウエンツ:思ったことがないですね。今の仕事をしていなければ思ったかもしれません。父方の祖父母も誰も会ったことがないので。ただ、ふと思い立って祖父母の故郷であるドイツに一人旅をしたことがあるんです。それまでも海外旅行をしたことはありましたが、あくまで“旅行”だったんです。でも、ドイツだけはものすごく居心地がよくて、ずっとここにいられるってこういうことなのかなという気持ちを初めて味わったんです。思い返すとなぜドイツに行こうかと決めた理由もわからなかったぐらいで。それまで自分の出自というものをほとんど考えていなかったのですが、そのときは感じざるをえませんでした。異国のはずなのに故郷の感覚がある。記憶でもなんでもないのに。ただ、悲しい気持ちは全然なく、僕はラッキーだと思いました。
——この映画に出演してどうでしたか。
ウエンツ:自分が31年生きてきた中で、初めての“格好良い”を味わいました。題材となったヘンリ・ミトワという人間の生き様、本作を手掛けた中村監督をはじめとしたスタッフの方々の男気、そしてそんな方々に作っていただいたこれまでとは全く違う自分。これまで自分の周りにあった格好良い、自分自身が思う格好良い、ではない新しい価値観を教えていただきました。はじめての“格好良さ”に出会える作品になっていると思います。
(取材・文=石井達也)
■公開情報
『禅と骨』
9月2日(土)ポレポレ東中野キネカ大森横浜ニューテアトルほか全国順次
監督・構成・プロデューサー:中村高寛
プロデューサー:林海象
ドラマパート出演:ウエンツ瑛士、余貴美子、利重剛、伊藤梨沙子、チャド・マレーン、飯島洋一、山崎潤、松浦祐也、けーすけ、千大佑、小田島渚、TAMAYO、清水節子、ロバート・ハリス、緒川たまき、永瀬正敏、佐野史郎
ナレーション:仲村トオル
配給:トランスフォーマー
(C)大丈夫・人人FILMS
公式サイト:www.transformer.co.jp/m/zenandbones/