『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』は伝説の番組となる? 三池崇史監督の手腕

 現在劇場公開中の映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』で、実写化不可能の壁を破った稀代の職人監督・三池崇史。同作ではここ最近続く漫画・アニメの実写化に不満を募らせる原作ファンからの不安の声があがっていたが、いざ公開してみればその再現度の高さに称賛する声も聞こえているのだ。

 そんな三池が総監督を務める特撮ドラマ『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』がいま大きな話題となっている。依頼を受ければどんな作品でも、実写化が可能であれば何でもやってみるというモットーの持ち主である三池が、これまでの作風から一転して本作のような作品を生み出すとは予想外だ。とはいえ、年に数本の映画を手掛ける彼だからこそ、高いクオリティの作品を短期間で作り出す連続ドラマのシステムは、非常にマッチしている。

 アイドルを目指す小学生のカノン(内田亜紗香)は、憧れのアイドル・マイ(足立涼夏)が結成するユニットのオーディションを受けに行く。すると彼女の前に音楽の国の妖精“ポップン”が現れ、「サウンドジュエル」と呼ばれる音楽の国の宝が魔王によって奪われ、人の心を悪に染めてしまう「ネガティブジュエル」に変えられたというのだ。魔王の手から「サウンドジュエル」を取り戻すため、カノンはマイと、ダンスが上手なフウカ(小田柚葉)と3人で、「ミラクルミラクル」というアイドルユニットを結成し、「アイドル戦士ミラクルちゅーんず!」として世界を救い始めるのである。

 4月から放送されている本作はすでに1クール半ほど進んでいる。毎週アイドルとしてのレッスンやイベントを積んでいく彼女たちの前に、敵である「毒毒団」が「ネガティブジュエル」を使って悪に染めた人々が現れるのだった。彼女たちは、歌とダンスによって人々を救い出していくという、ストーリーとしては実にシンプルなつくり。7月からはこの3人に姉妹ユニット「カリカリ」(薄倉里奈と西山未桜)が加わり、5人になった「ミラクルちゅーんず!」の活躍が描かれているのだ。

 男子児童向けの特撮ドラマといえば『ウルトラマン』シリーズを筆頭に、『仮面ライダー』シリーズや『スーパー戦隊』シリーズといった往年の名作が存在していたが、本作のように女子児童向けの作品というのはあまり印象にない。それでもアニメ作品では、本作同様に魔法の力で世界を救う『プリキュア』シリーズが10年以上に渡り高い人気を誇っているのは言うまでもない。同作のファンタジー要素に、『アイカツ』や『プリパラ』など同世代をターゲットにした作品のトレンドである“アイドル”要素を加え、実写にしたのが本作というわけか。

 ところが、本作は本来のターゲット層とは正反対の、大人の男性からも高い支持を寄せられているのである(前述したアニメ作品のほとんどが、そういった俗に言う“大きいお友達”から熱狂的な支持を集めていることを考えれば、さほど驚きは少ないが)。これまで「大人も楽しめる女子児童向け作品」という比較的狭いターゲットを視野に作られていたタイプの作品も、もはや「子供向け」というレッテルを剥がし、「全年齢対象」へとシフトしようとしているのではないだろうか。

 昨年の暮れに公開され、リピーターが続出するなど熱狂的に迎えられたアニメ映画『ポッピンQ』は、本作同様に歌とダンスの力で世界を救う少女たちが描かれた作品だ。高校生の主人公たちが抱える個々の悩みを物語のフックにして、美少女アニメの雰囲気と、ゲーム的世界観、そして歌とダンスのシーンをしっかりと描くアイドル的要素で、あらゆる層に向けて作られていたことがわかる。とりわけ「歌とダンスの力で、闇に染まろうとした世界を救い出す少女たち」という筋書きは、すべての世代が楽しめる流行要素と、定番のファンタジー要素を掛け合わせた最もポップなプロットということだろう。

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