『君の膵臓をたべたい』は特別な“初恋映画”だーーヒロイン・浜辺美波のノスタルジックな魅力

 物理的には主人公を上目遣いで見つめるのに、態度は少し斜め上から見下ろすかのように。そして喋るときには必ず相手をじっと見つめて口角を柔軟に動かす。先日2000年生まれの注目女優として彼女をピックアップしたが、(参考:浜辺美波、藤野涼子、八木優希、久保田紗友 ……“00年世代”は女優として完成し始めている)まさかそんな彼女から、現代の他の若手女優の誰も持ち得ていない、90年代前半頃の日本映画に出てくるようなヒロイン像が飛び出してくるなんて、誰が予想できただろうか。

 さらに、アフレコで録音されているのだろうか、所々で彼女の声が少し浮きあがっているように感じる。映画が12年前にタイムスリップしているのではなく、あくまでも現在から12年前を思い起こしているかのように描くねらいなのだろうか。だとしたらあまりにも効果的な一撃だ。すでに2度目の鑑賞を終え、ようやく宣伝文句に従って涙を流した筆者ではあるが、おそらくこの映画が劇場で流れている限り、定期的に足を運んでしまうことだろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『君の膵臓をたべたい』
7月28日(金)全国ロードショー
原作:住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社刊)
監督:月川翔
脚本:吉田智子
音楽:松谷卓
追加編曲:伊藤ゴロー
出演:浜辺美波、北村匠海、大友花恋、矢本悠馬、桜田通、森下大地、北川景子、小栗旬
(c)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社
公式サイト:http://kimisui.jp/

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