姫乃たま × プー・ルイが語る、“暗黒女子”とアイドルの裏側 「BiSは不幸を糧に大きくなってきた」
姫乃たま「(中学生の頃から)性的な目で消費されることが多かった」
ーーでは、最も印象に残っているシーンは?
姫乃:文学サークルのある部員が、最後の最後で自分が綺麗だと気づくシーンですね。実際に女子高生は大人には触れられない無敵さが魅力だと思うので、その無敵さをはっきり自覚したシーンに、この映画の全ての要素が凝縮されていると感じました。
プー・ルイ:平(祐奈)さん演じる学園一の秀才・二谷美礼が、小説を朗読するシーンから物語は始まるので、自分の中では彼女に対して真面目で優等生というイメージが確立されていました。なので、援助交際をしているシーンは衝撃的でしたね。
ーーあのシーンを撮影している当時、平さんは援助交際という言葉自体を知らなかったらしいんですよ。
プー・ルイ:えー! どんだけピュアなんだ。
姫乃:でも今って援助交際という行為自体が形を変えて廃れている印象がありますよね。すでに我々の世代でもあまり聞かなかったですが、言葉自体を知らないという時代になっているとは……衝撃です。
プー・ルイ:今でもやってる子はやってるんじゃないですか。
姫乃:パパ活とかなにかそういうものですか。あまり詳しくないのですが。
プー・ルイ:男性の性欲があんまりなくなってるんじゃないですか? ご飯食べてるところを見るだけでいいみたいな風潮ありますよね。そう言えば、高校生の時にパパ活やっている子いました。ある社長さんがご飯をおごってくれて、それをただ食べて、話すだけっていう。それ以外は特に何にもないらしいんですよ。
ーー『暗黒女子』では先生と生徒の恋愛模様もありましたが、実際にも女子校だと先生にファンはいるのですか?
プー・ルイ:いましたね。千葉(雄大)さん演じる北条先生は、かっこいいからいいですけど、実際には本当に気持ち悪い先生にもファンはいました。若い男の先生が入ってきたらまず取り合いになりますね。私の友達も先生のことを好きになってしまって、隠れてメールのやり取りまでしていたのですが、途中で先生の方から「もう、やめよう」と言われていました。
姫乃:うおお、生徒から好意を持たれていること自覚してるところがいやらしいですね。
プー・ルイ:そう。だから、「これ以上好きになったら後に引けなくなるから」みたいな感じでしたね。その後はもう、その子を中心に先生の悪口大会(笑)。
姫乃:なんか女子って怖かったなあ……。
プー・ルイ:逆もありますね。若い男の先生だからこそ、みんなでイジメるっていうことも。体育の後は、体操着から制服に着替えるから男の先生は教室に入れないんですよ。それをいいことに、チャイムが鳴っても鍵を閉めたままにして、締め出してましたね。
姫乃:可哀想に……。まさに“暗黒女子”ですね。
プー・ルイ:男の先生は、恋愛対象にもいじめの対象にもなるんです。みんなで結託して一人の男を排除するみたいな。性別的にも数的にも、圧倒的に弱いので。だって、「先生がセクハラした」って言ったら一瞬で終わるじゃないですか?
姫乃:あの、女子校にちょうどよい距離感はないんですか?
プー・ルイ:あることにはありますけど、思春期に最も興味を持つはずの対象、男がいないからこそ暇なんですよね。その好奇心が全て男の先生に注がれると言いますか。楽しみの一つなんですよ。だから、ちょうどいい距離感が生まれるのは、おじいちゃん先生くらいです。
ーーなるほど。では、登場人物の中で最も感情移入できるのは?
プー・ルイ:小百合(清水富美加)。性格の悪さが似てます(笑)。何においても、誰かを引きずり落としてでも自分が一番になりたい。どす黒さに共感しました。
姫乃:カースト上位だ! 私は美礼(平祐奈)かな。本作は女子高生という設定ですが、私は中学生の頃、彼女のような感じだったと思います。公立の中学校なんですけど同級生がみんなお金持ちで、私だけ一般家庭だったので。あと、背が伸びるのが早くて、当時は身長が高い方だったんですよ。ほかの女の子よりも身体的に成長しているせいか、性的な目で消費されることが多かったので、登場人物の中では比較的、感情移入しました。
プー・ルイ:そうだったんだ。私は最も共感するのは小百合だけど、みんなそれぞれ秘密を持っているという部分は、すごくリアルでBiSにも共通しているなと思いました。どんなに仲がいいメンバー同士でも、絶対に何かしら隠していることはあるんですよ。弱みを握られたら、それこそ立場が逆転、とまではいかなくても何かしら関係性が変わってしまうんです。グループ内でも“暗黒女子”の一面を見るときはありますね。たとえば、特典会。特典会中は、同じグループだけどライバルになるんです。そうすると、人の推しに手を出す子もいるんですよね。意識的にも無意識的にもやっているんだと思います。あとは、お互いに知られたくない部分は踏み込まないでおこうと、最低限の距離感は守ってますね。
姫乃:ほかのアイドルさんのファンが物販に来ると、楽屋にそのアイドルさんが来て、「うちのオタクがすいませーん」みたいにやんわり牽制されることもありますよね。