シネコンは新作だけを上映すべき? 立川シネマシティ「夏の極上爆音上映フェス2017」の挑戦
理想を語るだけでなく、実際にこれからシネマシティで行うことを示しましょう。シネマシティでは春に行った「ミュージカル劇場宣言!」(https://ccnews.cinemacity.co.jp/musical_theatre_declaration2017/)という新旧を織り交ぜたミュージカルフェスと、「春の極上爆音上映祭2017」(https://ccnews.cinemacity.co.jp/goku-baku_matsuri_spring2017/)の大きな成功を踏まえて、今夏「夏の極上爆音上映フェス2017」というまたしても「フェス化」を行います。
「夏の極上爆音上映フェス2017」ニュースページ
https://ccnews.cinemacity.co.jp/summer_goku-baku_2017/
これが、全員を幸せにするための、僕の出した回答のひとつです。この対象作品を公開順に見ていってください。夏の作品をただ並べたように見えるかも知れませんが、ヴァラエティを持たせてきちんと対象をばらけさせています。大作あり小規模作品あり、新作あり旧作ありで、それらをまとめて告知することで、本来届かなかったはずの層に情報を届けられる可能性を高めています。
さらにシネマシティだけのリヴァイヴァル上映を入れ込むことで、ニュースの独自性、話題性を一気に高めています。このことはイベント全体に好影響をもたらすはずです。
今回の目玉は『ターミネーター2 3D』の公開に合わせて上映する『ターミネーター』の「1」です。以前『バック・トゥ・ザ・シアター』というTOHOシネマズの旧作上映企画で使われた素材を海外から取り寄せました。デジタルリマスターされて音も映像も美しく生まれ変わったヴァージョンです。
もちろん、meyer soundの優れたスピーカーを備えた最大劇場で、音響家・増旭さんに調整をお願いして【極上爆音上映】を行い、ファンに爆上げした興奮と恐怖を届けます。
【極爆】という付加価値をつけ、このタイミングで行うことで『T1』の興行力をアップさせ、そのことで『T2 3D』の宣伝につなげます。『タイタニック 3D』も素晴らしい仕上がりでしたが、ジェームス・キャメロン監督の3Dへのこだわりは相当ですので、今作もかなり期待できます。
さらに昨年夏の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作【極爆】に続いてシリーズ上映行うことで、「シネマシティは夏休みに何か仕掛けてくるぞ」という来年への期待感も醸成できます。それが有料会員に入会あるいは継続してもいいかもという理由につながり、シネマシティにとっても手間をかけるだけのメリットがあります。
これで大体みんな幸せになれるはずです(笑)。そうして例え一歩ずつでも前に進むのです。
映画館はかつては映画を観る唯一の手段でしたが、今は映画を観る方法はいくつもあります。そのため「映画を映画館で観る意味」をどの映画館も追求することを求められます。映画館で観る、その大きな理由のひとつは「外界から遮断された状態で、大画面、大音量で没頭して鑑賞したい」ということでしょうが、この時、それが新作であることはマストではないでしょう。
動画配信サービスが「面白ければ、製作年度も制作費も関係ない。ジャンルも、題材も関係ない」というシンプルで観客目線に忠実なスタイルでフラットに作品を提供し始めている以上、映画館にもやがて影響があると考えられます。
新作だけでなく旧作も、映画だけでなく音楽ライブも……と上映作品の多様化に取組むことも、新しい上映設備の導入と同じくらい映画館の未来を切り拓くのに重要なことだと考えています。映画館の存在意義が変わりつつあるからです。
今回は映画の話に留めましたが、多様性の話で言えば、もはやとっくに映画と海外の連続ドラマの境界線は消え去っている、というテーマもあります。
するとこの先、動画配信サービスは、逆に映画館のスクリーンを必要としてくるはずです。Huluで配信されている『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』が最近劇場公開されたことがそれを裏付けます。『SHERLOCK/忌まわしき花嫁』もありましたね。
話は尽きませんが長くなりすぎました。その話題はまた、別の機会に。
You ain't heard nothin' yet !(お楽しみはこれからだ)
(文=遠山武志)
■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。https://cinemacity.co.jp/