新鋭監督の主要部門独占、女性監督の台頭……第70回カンヌ国際映画祭に大きな変化
ソフィア・コッポラといえば、言わずもがなフランシス・フォード・コッポラの娘にあたり、『ヴァージン・スーサイズ』での長編監督デビューから、『ロスト・イン・トランスレーション』ではアカデミー賞監督賞にノミネート(脚本賞を受賞)。『SOMEWHERE』ではヴェネツィア国際映画祭金獅子賞に輝くなど、現代アメリカ映画界ではキャスリン・ビグローと並ぶ重要な女性監督のひとりだ。
受賞作となった『The Beguiled』といえば、クリント・イーストウッドが1971年に主演したドン・シーゲル監督作『白い肌の異常な夜』のリメイクにあたる、トーマス・カリナン原作のミステリー。オリジナルでイーストウッドが演じた役をコリン・ファレルが演じ、彼をめぐり争い始める女性たちにはちょうど第70回記念賞を受賞したニコール・キッドマンを筆頭に、『メランコリア』で6年前のカンヌ女優賞に輝いたキルスティン・ダンスト、そして成長著しいエル・ファニングと豪華な顔ぶれ。年内の日本公開が実に楽しみな作品である。
実際のところ、今年のカンヌ国際映画祭で最も讃えられた作品は何か。それはパルムドール受賞作以上に、グランプリに輝いたロバン・カンピヨの『120 battements per minute』で間違いない。あらゆる星取りを見ても常に高評価を集め上位に入った同作は、エイズに対する差別や不当な扱いと戦ったカンピヨ監督自身の経験をベースにした、1990年代前半の若者たちの姿をとらえた140分の珠玉のドラマである。(参照記事:第70回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『BPM (Beats Per Minute)』2017年日本公開へ)
公式部門におけるグランプリのほか、独立部門では国際批評家連盟賞や作品のジャーナリズムを称えたフランソワ・シャレ賞、さらにLGBT作品へ贈られるクィア・パルムも受賞。つい2年前、カンヌのグランプリからアカデミー賞の外国語映画賞まであらゆる賞を席巻したネメシュ・ラースローの『サウルの息子』も、国際批評家連盟賞とフランソワ・シャレ賞を受賞していた。そこに2010年から始まったクィア・パルムで初めてコンペティションの主要部門に選ばれた作品ともなれば、このまま来年のオスカーまで突き進む可能性が高いのではないだろうか。
さて、今年のカンヌ国際映画祭で大きな話題となった「Netflix論争」(参照記事:劇場公開されない作品には受賞価値なし? カンヌ国際映画祭“Netflix論争”当事者たちの見解)。ポン・ジュノの『オクジャ/okja』はペドロ・アルモドバルの当初の発言通り「いかなる賞にも」輝くことはなかった一方で、ノア・バームバックの『The Meyerowitz Stories』は独立部門のパルムドッグ特別賞に輝いた。いずれにしても公式部門からシャットダウンされたことに変わりはない。