「“怒りを抱えた国”を見せる作品だ」『LOGAN/ローガン』監督インタビュー

「タイトルからクレジットまで、一貫して自分の物語を伝えたい」

ーーちなみに、『X-MEN』シリーズと同じマーベル原作のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)や、DCコミックス原作のDCエクステンデッド・ユニバースなどのアメコミ原作映画を意識することはあるのでしょうか?

マンゴールド:僕はそういう忍耐力や辛抱強さがないから、他の作品を意識することはほとんどない。言ってみれば不動産と同じようなもので、僕は周りを気にする必要がない、他との繋がりがほとんどないような場所を選びたいんだ。とはいえ、一連のアメコミ原作映画を作っているのはみんな実力のある素晴らしいフィルムメーカーたちだから、そこはリスペクトしているよ。あくまでも自分の好みとして、TVシリーズのような、ひとつの大きな世界観の一部として作品を作ることにはあまり関心がないんだ。メインタイトルからエンドクレジットまで、一貫して自分の物語を伝えたいと考えている。だから、何かグッズを売るためだとか、次回作に繋げるために無理して何か繋がりを持たせなければいけないということであれば、スタジオは僕を起用しないほうがいい(笑)。僕がそういうことをした場合、作品そのものに損害を与えてしまうかもしれないからね。何らかの形ですべての作品を繋げていくという作り方は、作り手の声を奪ってしまう可能性がある。それこそ長く続いているTVシリーズのようになってしまうと思うんだ。

ーーTVシリーズでいうと、あなたも過去に製作総指揮として『VEGAS/ベガス』や『暴走地区-ZOO-』などを手がけていましたが、近年は特に映画監督がTVシリーズを手がけることが増えてきましたよね。その辺りについてはシーンをどのようにみていますか?

マンゴールド:TVシリーズと一言で言っても、パイロット版だけを手がける監督も結構多いんだ。でも、パイロット版だけを監督する場合と、シリーズを通してすべてを監督する場合はまったく違うものと言える。パイロット版を手がける場合は、キャスティングから作品のルックまでほぼすべてをその監督に委ねられるところがあって、それ以降を担当する場合は、最初の監督が作り上げたスタイルや伝統を続けていかなければいけないから、そのパイロット版に合わせる必要がある。だから、パイロット版の監督は比較的映画と近しい面白さがあるけれど、それ以降の1エピソードだけをやるということであれば、クリエイティブな空間はより狭まり、監督としての面白さも薄れてしまうんだよね。それに加えて、経済的な観点から、作られる映画の本数自体が少なくなっている中、大作ばかりが作られていく。だから、人間ドラマを作りたい場合は、映画よりもTVのほうが作りやすくなっているんだ。そういう意味でも、映画監督が自分のキレやシャープさを保つために、活発な活動を続けていくためにも、TVシリーズがひとつの活躍の場になっているのだと思う。今回の『LOGAN/ローガン』は、大作でありながらも、きちんと人間ドラマを描くことができたから、僕としてもすごく満足しているんだ。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『LOGAN/ローガン』
全国公開中
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート
配給:20世紀フォックス映画
(c)2017Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/logan-movie/

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