『帝一の國』の実写化はなぜ成功したのか? 菅田将暉らが息づかせたキャラクターのリアルさ

モルモット吉田の『帝一の國』評

 それにしても、盗聴、謀略、大衆扇動(マイムマイム事変を見よ)を得意とする帝一が目指す帝一の國とは、完全に制御された独裁帝国なのではないかと空恐ろしくなるほどだが、原作の終盤に描かれている帝一の行く末は置くとして、帝一自身が帝国志向を自覚しているからこそ、自身の生徒会長選挙戦では突飛な行動に出て自らが権力を握ることを抑制したようにすら思えてしまう。

 ことほどさように菅田将暉によって帝一のキャラクターは見事に映画の中で息づき始め、それに呼応して間宮祥太朗の氷室ローランドをはじめ、志尊淳、千葉雄大、鈴木勝大といった実力のある若手男優たちの存在を際立たせた点も、稀有な成功例と実感させる所以である。

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■モルモット吉田
1978年生まれ。映画評論家。「シナリオ」「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿。初の単著『映画評論・入門!』(洋泉社)が発売中。

■公開情報
『帝一の國』
公開中
出演:菅田将暉、野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗、志尊淳、千葉雄大、永野芽郁、吉田鋼太郎
監督:永井聡
脚本:いずみ吉紘
原作:古屋兎丸(集英社『ジャンプSQ.』)
企画・製作:フジテレビ
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝
(c)2017フジテレビジョン 集英社 東宝
(c)古屋兎丸/集英社
公式サイト:teiichi.jp

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