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BOMI「えいがのじかん」第4回

主人公サルーの境遇は私の人生と重なるーーBOMIが語る『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』

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 サルーがすごいなと思ったのは、実の母親に会いに行った後、その事実を義理の両親にちゃんと報告していたこと。しかも最後に実の母親と義理の母親を会わせているんですよね。それって実はなかなかできないことなんです。私は未だに無理で、なんとなく育ての母には血の繋がりのある母のことを話さないようにしているし、逆も然り。会って何かを聞かれても「元気だよ」ぐらいしか話さないんですよ。私の場合とサルーの場合は状況が違うので簡単に比較はできませんが、実の母と義理の母、お互いにとって知っていいことってあるのかなって思ってしまうんです。昨年12月にリリースしたアルバムは自分のルーツと向き合った内容になっているのですが、どちらの母にも聴かせていません。やっぱりちょっと勇気がいるんですよね。私自身が本当に思っていることだけど、これを聴いた2人を傷つけてしまったらどうしようとか考えてしまって、聴かせられないんですよね。だから似たような境遇だけど、私とサルーはそこがまったく違うなと感じました。

 サルーと本当のお母さんの再会シーンは本当に感動的な素晴らしいシーンで。一方、私の場合、向こうはめちゃくちゃ泣いていましたが、私は全然泣けなかったんです。「あなたがこんなにすくすくと育っていて、すごく嬉しい。でもこの失った何十年を私が見れたらもっと幸せだったのに」みたいなことを言われてバーっと泣かれたのですが、「私に言われても……」というような感じで。いろいろ事情はあったようなのですが、私にとって実の母は私を構成するピースのひとつであって、“母”ではなかったんですよね。だから人との関係性っていうのは、一緒に過ごした時間で決まるのかなと、この映画を観ても改めて思いました。育ての両親にちゃんと感謝の気持ち伝えていたサルーはすごく成熟した精神の持ち主のように思えました。私もサルーのような視点を持つことができれば、いつか育ての両親にそういった思いを伝えることができるかもしれません。

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 映画の話に戻ると、インドのパートが意外と長かったので、オーストラリアのパートで成長したサルー(デヴ・パテル)とその恋人となるルーシー(ルーニー・マーラ)が急に道端で踊り出した時は、インド映画お馴染みのダンスが始まるのかと思ってしまいました(笑)。主要キャスト以外のキャスティングはインドの学校や町中でささっと選ばれた子たちがオーディションを受け、抜擢されたそうですが、インドという人で溢れた国でそんなキャスティングをするというのも驚きで面白かったです。

 現地で撮られているので当然といえば当然かもしれませんが、街並みや家の様子、貧しい人たちの描写に関しても、『LION』にはインドの“現在のリアル感”がありました。私、8年前ぐらいにインドを訪れたことがあって。今はまた状況が変わっているかもしれないけれど、当時からインドにもシネコンがあって、さすが“ボリウッド”という感じでした。その時私はインドのラブストーリーを観たのですが、インドの人たちって面白い映画の見方をするんです。最近は日本でも“マサラ上映”が行われたりしますが、少し悲しいシーンとかになると、ものすごいガヤを飛ばすんですよね。あと基本的に上映時間が長いので途中休憩があったり、町が砂っぽいので映画館の床も若干砂っぽかったり……。そういったインドでの記憶も、この『LION』を観て蘇りましたね。

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 主演のデヴ・パテルやルーニー・マーラ、ニコール・キッドマンらはもちろん、幼少期のサルー役の子たちも含めてみんな素晴らしい演技をしていました。最後のサルーとお母さんの再会シーンは、本当の家族にしか見えませんでした。前に一度、『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督にお会いした時に「演技とは関係性がどう見えるか。そのように見えることが大切」というようなニュアンスのことを言っていたんです。“見せるか”じゃなくて、“見えるか”。それを聞いた時に「なるほど!」と膝を打ったんですが、あのシーンはリアルな家族にしか見えなくて、本当に感動して涙が止まりませんでした。

 もちろん、このお話が“実話”だから感動するという面もあると思います。これが仮にすべてフィクションだとしたら、「なるほど」としか思っていなかったかもしれません。“本当にあった話”という事実で、自分の中で作品の評価が3割増ぐらいになっているような気がしますが、それも含めて素晴らしい映画でした。私も自伝を書けば映画にできるかもしれない! とふと思いついたのですが、もう『LION/ライオン ~25年目のただいま~』みたいな完璧な作品があるからダメですね……。

(取材・構成・撮影=宮川翔)

■BOMI(ボーミ)
シンガー。2012年6月に日本コロムビアよりミニアルバム『キーゼルバッファ』でメジャーデビュー。2015年にセカンド・アルバム『BORN IN THE U.S.A.』を発表。そして昨年12月にはTOKYO RECORDINGSプロデュースによる最新アルバム『A_B』をリリースした。モデルや女優としても活躍中。公式サイトTwitterFacebook

■公開情報
『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
TOHOシネマズ みゆき座ほかにて公開中
製作:イアン・カニング
監督:ガース・デイヴィス 
出演:デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、デヴィッド・ウェンハム
配給:ギャガ
提供:ギャガ、テレビ東京
(c)2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia
公式サイト:http://gaga.ne.jp/lion/

      

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