星野源演じる“先輩”は円=縁の結び目に 『四畳半神話大系』と『夜は短し歩けよ乙女』の相違点

 湯浅監督作品のキーワードは“魂の開放”。自意識や周囲の視線やいろんなものに縛られている人間が、ある瞬間、その枷から開放され自由になる。湯浅監督はそんな瞬間を描き続けているのだ。(『ピンポンTHE ANIMATION』の最終回で試合を通じて童心を取り戻していくペコとスマイルの姿を思い出してほしい)。

 そして『夜よ短し歩けよ乙女』にも“魂を開放”するシーンは存在する。しかも、そのうち1回はなんとミュージカル・シーンなのである。秋山竜次(ロバート)と星野源と花澤香菜と神谷浩史が繰り広げるミュージカル・シーンというものが想像つくだろうか? これが実に奇妙でかつ感動的でありながら、おもしろいのである。このあたりは、リアリズムから少しズレたグラフィックなスタイルを採用した本作だからこそ、うまくはまったシーンでもある。

『夜は短し歩けよ乙女』予告映像

■藤津亮太
1968年生まれ。アニメ評論家。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)がある。アニメ!アニメ!にてアニメ時評「アニメの門V」を連載中。titterID:@fujitsuryota

■公開情報
『夜は短し歩けよ乙女』
現在公開中
出演:星野源、花澤香菜、神谷浩史、秋山竜次(ロバート)、中井和哉、甲斐田裕子、吉野裕行、新妻聖子、諏訪部順一、悠木碧、檜山修之、山路和弘、麦人
原作:森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫刊)
監督:湯浅政明
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
キャラクター原案:中村佑介
音楽:大島ミチル
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION
制作:サイエンス SARU
製作:ナカメの会
配給:東宝映像事業部
(c)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会
公式サイト:https://kurokaminootome.com/

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