成馬零一の直球ドラマ評論

『カルテット』が描こうとする“夢と才能”の問題 坂元裕二は現代日本をどう切り取る?

 ライブレストラン「ノクターン」が募集していた演奏家の枠に申しこもうとした4人だったが、すでに余命9ヶ月のピアニスト・ベンジャミン瀧田(イッセー尾形)が契約していた。「余命9ヶ月」という触れ込みが嘘だと知った巻は、店主にベンジャミン瀧田の正体を話して彼をクビにすることで、自分たちの仕事を獲得する。そのことに対して4人の間で不協和音が生じる中、巻は自分の気持ちを語る。

「私達アリとキリギリスのキリギリスじゃないですか。音楽で食べていきたいっていうけど、もう答え出てると思うんですよね。私達、好きなことで生きていける人になれなかったんです。仕事にできなかった人は決めなきゃいけないと思うんです。趣味にするかそれでも、まだ夢にするのか。趣味にできたアリは幸せだけど、夢にしちゃったキリギリスは泥沼で、ベンジャミンさんは夢の沼に沈んだキリギリスだったから嘘つくしかなかった。そしたらこっちだって、奪い取るしかなかったんじゃないですか?」

 この台詞は、音楽に限らず、好きなことで食べていこうと思った人間なら、老若男女にかかわらず直面する現実だろう。謎が多く、先の展開が読めない作品だが、“夢の沼に沈んだキリギリス”たちがどのように生きればいいのかについて、格闘するようなドラマになってほしいと願っている。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
火曜ドラマ『カルテット』
1月17日(火)スタート 毎週火曜22:00〜22:54(初回15分拡大22:00〜23:09)
出演:松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし(サンドウィッチマン)、八木亜希子、Mummy-D、もたいまさこ
第1話ゲスト:イッセー尾形、菊池亜希子
脚本:坂元裕二
チーフプロデュース・演出:土井裕泰
プロデュース:佐野亜裕美
製作著作:TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/quartet2017/
公式Twitter:@quartet_tbs
公式Instagram:@quartet_tbs
公式LINE:@quartet

関連記事