『ヒトラーの忘れもの』が伝える痛みのリアリティ 美しい海と地雷が意味するもの

『ヒトラーの忘れもの』が伝える痛み

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 かつてジャック・リヴェットは批評家時代に、『アルジェの戦い』(1966)で名高いジッロ・ポンテコルヴォがナチスの強制収容所を題材にした『ゼロ地帯』(1959)の「美化」された物語を痛烈に批判したが、戦争映画というのは戦争自体が「非=現実」であるため安易な「リアリズム」が通用しない。そこではその日常ならざるものをどの程度「虚構化」し、どのように切り取っていくのかという「映画的倫理」が作家に常に要求される。その点で、けたたましい爆発音とともに次々散っていく少年たちの姿を決して「滅びの美」などには回収せずに、どこまでも淡々と対象にキャメラを向け続けた演出家の態度はかなり信用にたるものだと言えるだろうし、なにより『ヒトラーの忘れもの』は人間的な「痛み」を伴っている点において「真実味」がある作品なのである。

(文=加賀谷健)

■公開情報
『ヒトラーの忘れもの』
シネスイッチ銀座ほかにて公開中
脚本・監督:マーチン・サントフリート
出演:ローラン・ムラ、ミゲル・ボー・フルスゴー、ルイス・ホフマン
配給:キノフィルムズ
(c)2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S & AMUSEMENT PARK FILM GMBH & ZDF
公式サイト:http://hitler-wasuremono.jp/

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