田原総一朗、町山智浩、森本敏……軍事サスペンス『アイ・イン・ザ・スカイ』に賞賛コメント

『アイ・イン・ザ・スカイ』賞賛コメント

 12月公開映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』より、田原総一朗、町山智浩、森本敏らの賞賛コメントが公開された。

 本作は、映画『クイーン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンが主演する軍事サスペンス。英米合同軍事作戦が遂行される会議室を舞台に、無人偵察機ドローンで大規模自爆テロを防ごうとする軍人たちの葛藤や、現代の戦争の闇を映し出していく。

 英国国会議事堂内(ウェストミンスター宮殿)での試写会や、米国の軍事関係者向けに試写が行われたという本作。ニューヨークで10月19日に行われた「ヒューマン・ライツ・ファースト・アワード」では、“シドニー・ルメット賞”を受賞した。ポール・イートン元米陸軍少佐は、「この作品は米国の国家安全に関わるすべての人が観るべきだ。政権はもちろん、国防省、国家安全保障会議も。なぜなら何が正しい答えなのかというジレンマを正確に描写しているからだ。今、パキスタンでのドローン攻撃が示しているように、短期的な勝利は長期的な損失を生む可能性がある。短期的な勝利かつ長期的な勝利を生む決断を下す場合もあるが、無実の人々に被害を及ぼすことによって、長期的な損失となってしまう場合が多い」と、コメントを寄せている。

20161205-EITS-s1-th.jpg

 

 ジャーナリストの田原総一朗は、「ドローン戦争の問題点を鋭く描いている。たまたまテロリストの隠れ家の脇にパン売りの少女がいることがわかり、その少女の命をめぐって、軍人や政治家が正義とモラルのジレンマで困惑し、結果としては決断がたらいまわしにされる。緻密な緊迫感で息もつかせず見た」と述べ、作家の猪瀬直樹は「戦争における“正義”を極限まで問い詰める、答えは一つではないが決断は下さなければならない。日本人ならどうするか。2016年最高の傑作!」と、正義とモラルに揺れる登場人物たちの心情を語っている。

 さらに、映画評論家の町山智浩は、「なんという壮絶で強烈な映画! 見終わった後はぐったりだ! レッサー・イーヴル(最善の悪)としてアメリカはドローンを選んだのだ。ドローン攻撃をする側に悪人は一人もいない。ただ平和を守りたいだけの人々が罪を背負わされる日々が今も続いている。『アイ・イン・ザ・スカイ』というタイトルは、そんな現代の悲劇を見下ろす神のまなざしすら暗示しているようだ」と、本作を解説。拓殖大学総長で元防衛大臣の森本敏は、「テロリストに殺されるかもしれない多くの人を救うか、目の前にいる一人の少女を救うか。映画は法秩序と人間の尊厳の間にある葛藤を見事に表した傑作である。現代を生きる我々にとって必見の作品だ」と、現代の戦争のジレンマを描いた本作に賛辞を寄せている。

20161205-EITS-s2-th.jpg

 

コメント一覧

佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)

善悪とは何かという道徳的ジレンマを強烈に突きつけてくる。一秒も目を離せない緊張感に溢れたサスペンス。そして戦争映画なのに、主な舞台は会議室とコントロールルーム。圧倒された。

小川和久(軍事アナリスト)

きれい事を振りかざす政治家に凄惨なテロ現場を見てきた軍人が言う。「決して軍人に言ってはならない。彼らが戦争の代償を知らないなどと」。テロリスト殺害のために一人の少女を犠牲にできるのか  作品は、この永遠の命題に一つの回答を突きつける。重い。

三浦瑠麗(国際政治学者)

正義の選択とは何か、をめぐって誰もが混乱していく。戦争映画にありがちな決断の小気味よさは奪われ、私たちは自己決定権を奪われていく。そんな現代戦はとても人間的だった。より多くのことを知ることが「幸せ」を意味しない、現代を象徴する映画。

ピーターバラカン(ブロード・キャスター)

リモコン戦争の一日を記した作品です。中東を中心に、毎日同じようなことが起きています。この映画を見た衝撃を無駄にせず、この国が戦争に加担しないように力を合わせましょう!

丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)

ドローンの「目」で人間を「駒」として見ると、テロに巻き込まれる偶然と必然があることを客観視できる。過去にテロとニアミスしたことがあるが、その場では何が起きているのかわからず現実感もなかった。俯瞰の視点ゆえのリアリティが皮肉である。

黒井文太郎(軍事ジャーナリスト)

「ゲーム感覚で人を殺す」とのイメージもある無人機だが、実際には悩み苦しみながら操縦している兵士たちがそこにはいるのだ!

想田和弘(映画作家)

実際の「対テロ戦争」は、映画よりもはるかに無慈悲で残酷でビジネスライクであろう。しかしそれでも本作は、観る者一人ひとりに強烈なジレンマを突きつける力を持つ。「自分なら引き金を引くのか?」という究極の選択を。

西恭之(静岡県立大学特任助教)

敵を狙い撃つ能力は非戦闘員の命を守る国家の責任を重くしているが、主人公をジレンマに陥れているのは、テロ組織が世界中から自爆者を募るという大量殺人能力の「民主化」だ。オバマ米大統領が退任前に、自国のドローンに大統領の良心以外の歯止めをかけようとしている今、日本国民も見るべき映画だ。

安藤優子(ニュースキャスター)

決定のたらい回し、責任の転嫁、戦場に行かなくてもミサイルが撃てる現実をさらに恐ろしいものにしている権力者たち。

小島秀夫(ゲームクリエイター)

たった一機の無人偵察機(ドローン)からの映像を通し、"戦争の代償"を真っ向から描いている。無人機の"空の目(アイ・イン・ザ・スカイ)"が、テロリストの住処を映し続ける一方で、映画の"空の目"は、軍事行動に踏み切るかどうかの緊迫したドラマを捉え続ける。どれだけ"安全な戦場"が進化して、"空の目"を手に入れても、人類は"神の目"にはなれない。

森達也(映画監督)

大勢を救うために少数を殺すことは許されるのか。古典的な戦争のジレンマが、進化したドローン兵器によって突きつけられる。でも人はテクノロジーのように進化していない。だから悩む。責任を回避する。決断する。祈る。目をそむける。そして今も地球のどこかで、数量に変換された命が犠牲になる。

小堺一機

“パソコンの上での戦争”安全な場所での戦争?戦争に安全な場所など無い。この映画を観ている間、僕の“正義”はブレまくった。いくらドローンが発達しようが、“戦争”は“人間”がやるのだ。“正しくない”行為の中の“正しさ”あなたはどう任務を遂行しますか?

■公開情報
 『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
12月23日(金)より、TOHOシネマズシャンテ他で公開
監督:ギャヴィン・フッド
プロデューサー:コリン・ファース、デヴィッド・ランカスター
出演:ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマン
配給:ファントム・フィルム
(c)eOne Films (EITS) Limited

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ニュース」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる