『べっぴんさん』の見どころは“芳根京子”だ! 類稀なる女優の才はどこまで磨かれる?
第6話でこの二人と共に並んで日の丸弁当を食べている場面で、芳根らしい表情がついに見られる。高良健吾演じる幼馴染の野上潔がバイクに乗ってやってくるのを見つけたとき、隣の百田がときめいた表情を見せるのをちらっと見るとき、そして大きな声で呼ばれて戸惑う表情。すっかり彼女の十八番とも言える目を真ん丸に開いた表情を、これから毎朝のように見続けられると考えると実に嬉しい。
表情の芝居だけでなく、今回のすみれ役での最大の課題は神戸弁への挑戦である。もともと東京の出身の彼女が、正反対の京阪式アクセントにどう向き合うことができるか。今年の1月に放送された『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)では似たアクセントを持つ奈良弁を話す役に挑んでいたとはいえ、やはり最初はぎこちなさが残るものであろうか。半年間でどこまでそれが上達するかが鍵となるだろう。
8日の土曜日に姉役の蓮佛美沙子と共に出演した『土曜スタジオパーク』(NHK)では、持ち前の天真爛漫さを発揮する。毎週文化放送で放送されているラジオ『レコメン!』内の「芳根京子のみみにリコピン♪」で、演技とはまた違う魅力を引き出している彼女だが、やはり映像で見るとより一層と魅力的だ。その中で、視聴者からの質問に答える一幕があり、彼女はカメラの方に向かって手を差し出すのだ。トーク番組の画面に、突然現れた何とも映画的な遠近感。それを半ば無意識的に作り出すなんて、やはり類稀なる女優の才を感じる。さらに、NHK-BSのキャラクター・ななみちゃんから好きなスポーツを訊かれ、走ることが好きと語った彼女。はやく劇中でも走ってる姿が見たいものだ。
今年は前述の『いつ恋』の後、6月にフジテレビ系で2夜連続放送されたドラマ『モンタージュ 三億円事件奇譚』でのヒロイン、同じ時期には瀬々敬久監督の『64-ロクヨン-』で佐藤浩市演じる主人公の娘役を演じ、今回はそれ以来の演技となる。後者では少ない出番に加え、ほとんど顔が映らないながらも、強い存在感を発揮していた。(まったく知らずに観に行き、声が聞こえた瞬間に思わずスクリーンに釘付けになってしまった。)
これから半年間は、他の作品で見ることがほとんどなくなるわけだが、それでも毎日彼女の演技が見ることができ、新たな朝ドラヒロインとして世の注目を集めるなら、言うことなしだ。早くも放送終了後の大躍進も期待してしまっているが、まずはこの『べっぴんさん』を通して、彼女がどこまで進化するのかが大いに楽しみである。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■番組情報
出演:芳根京子、生瀬勝久、菅野美穂、蓮佛美沙子ほか
作:渡辺千穂
音楽:世武裕子
平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定)
<総合>
(月〜土)午前8時〜8時15分/午後0時45分〜1時[再]
<BSプレミアム>
(月〜土)午前7時30分〜7時45分/午後11時〜11時15分[再]
(土) 午前9時30分〜11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「べっぴんさん一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時〜11時20分
「5分で『べっぴんさん』」
<総合>
(土)午後2時50分〜2時55分
(日)午前5時45分〜5時50分/午後5時55分〜6時
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/beppinsan/