『ジェイソン・ボーン』ポール・グリーングラス監督インタビュー

『ジェイソン・ボーン』ポール・グリーングラス監督が明かす、『ボーン』シリーズ復活の理由

 『ボーン・アイデンティティー』(2002)、『ボーン・スプレマシー』(2004)、『ボーン・アルティメイタム』(2007)の『ボーン』シリーズ3部作に続く最新作『ジェイソン・ボーン』が、10月7日に公開された。本作は、記憶を失い、愛する者を奪われた最強の暗殺者ジェイソン・ボーンの新たな戦いを描いたアクション映画だ。リアルサウンド映画部では、シリーズ第2作『ボーン・スプレマシー』と第3作『ボーン・アルティメイタム』に続きメガホンを取った、ポール・グリーングラス監督に電話取材。9年ぶりに新作を製作することになった背景や、盟友マット・デイモンとの仕事について話を訊いた。

「社会全体の大きな変化を反映したかった」

ポール・グリーングラス監督

ーー9年ぶりの『ボーン』シリーズ最新作の製作にあたって、あなたが最も意識したことを教えてください。

ポール・グリーングラス(以下、グリーングラス):過去の3作と調和することを意識したね。本当にきつくてプレッシャーがのしかかる時は、危機に直面しても一緒に安心できる同志を周囲に固めたいものなんだ。そんな時、マット(・デイモン)ほどいい同志はいない。いや、同志というよりかは友人だね。今回の作品の製作は、重労働で旅や移動もたくさん重ねたんだ。様々な問題も生じたけど、とにかく楽しくて気分爽快な現場だったよ。

ーーこの9年間の間にマット・デイモンとは『グリーン・ゾーン』でもタッグを組んでいますが、久しぶりに“ジェイソン・ボーン”としての彼と仕事をしてみていかがでしたか?

グリーングラス:確か初日のロケはスペイン・カナリヤ諸島のテネリフェ島だったんだけど、そのとき、最後にジェイソン・ボーンとしてのマットに会ってからは約10年も経っていたんだ。だけどとても面白いことに、まるで先週前作をクランクアップして、またすぐに今作に取り掛かったような感じで、ビックリするぐらいスムーズに入り込めた。それだけ素晴らしい現場の日々だったよ。今作は大いに楽しみながら作れたね。彼の才能は、一瞬の目つきや表情で、何を感じているのか、何を考えているのかを伝えることができる力なんだ。その力を持つ俳優はいないし、すばらしい才能だね。

(左から)マット・デイモン、ポール・グリーングラス監督

ーージェイソン・ボーンの新たなステージにふさわしい、社会政治的背景が現実世界で起こったことにより、シリーズの復活が可能になったとのことですが、具体的にどのような影響を受けたのでしょうか。

グリーングラス:できるだけ作品に現代性を出すために、前作『ボーン・アルティメイタム』が公開された2007年から今に至るまで、世の中で起こったことを書き出してリストを作ったんだ。そしたら、驚くべき変化が見えた。2007年当時、ソーシャルメディアはほとんどなかったし、もちろんウィキリークスもなかった。スマートフォンさえもまだまだ使われていなかったんだ。もちろん、エドワード・スノーデンやジュリアン・アサンジの影響も大きいんだけど、今回の作品には社会全体の大きな変化を反映したいと思っていたんだ。また、ジェイソンは、前作から9年間、荒野でさまよう人生を送り、過去から逃げようともがいてきた。でも、どうしようもない行き止まりにたどり着いて、これ以上逃げられないという状況に陥ったときにどうするのか。戻るしかないという状況で、どんな行動を起こすのか。そこが、これまでのシリーズとは異なる点だし、注目してほしい部分だね。

 

ーー前3部作との違いという意味では、今回初登場のアリシア・ヴィキャンデルはシリーズに新たな風をもたらしたように感じました。

グリーングラス:前作から9年経って新しい世の中になった中で、新時代を象徴する若い女性のキャラクターを作りたかったんだ。それが彼女の起用理由だ。『リリーのすべて』などの演技でアリシアがすばらしい女優だとは分かっていたが、正直出演をOKしてくれるとは思っていなかったよ。彼女と初めて会ったのは一緒にランチをしたときなんだが、一言目に「ジェイソン・ボーンの作品に是非出たいわ!」と彼女が言ったんだ(笑)。アリシアは、はっきりしているしガッツがある。僕と彼女はとても気が合ったよ。

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