破壊の魅力を描くアニメーション 宮崎駿と庵野秀明、そして『アングリーバード』
『シン・ゴジラ』で、文字通り最も「熱量」の高いシーンは、やはりゴジラが東京の街を大破壊するシーンだろう。建物が次々に崩壊していく様子に、興奮と快感を覚える。しかし同時に、そこに何か後ろ暗い感情を抱いてしまうのも確かである。
鳥のキャラクターを弾丸のように弾き飛ばし、建造物を破壊しながら、卵を奪ったブタを倒していくアクションパズルゲーム、「Angry Birds」(アングリーバード)も、かわいい絵柄ながら、童話「三匹のこぶた」のオオカミのように家を破壊していくという暴力的快感が、ある種の大きな魅力となっている。「Angry Birds」は様々なメディアミックスが展開され、すでにナンセンスな風味のTVアニメシリーズが作られているが、今回の劇場用アニメーション『アングリーバード』は、CGを駆使し飛躍的にハイクォリティーな作品となっている。
飛べない鳥たちが住むバードアイランドで、怒りっぽい性格から島の皆に理解されずに一人孤独に暮らす、眉毛の太い「レッド」が本作の主人公だ。彼は、アルバイト中に理不尽な客に対してキレまくってしまったことで、裁判所命令によって「アンガーマネジメントクラブ」に通い、グループセラピーの手法で怒りをコントロールする方法を学ばされるはめになる。独り身の生活の孤独や、法律による無謀行動への制裁というリアリティある要素が面白い。子供向け作品とはいえ、子供たちを劇場に連れていくのは親だ。近年のアメリカの子供向け劇場用作品では、大人たちをも喜ばせるネタをいろいろと仕込んでいることが多い。
そうこうしているうちに、ブタの一団が島にやって来て、鳥たちの卵を奪ってゆく。本作の見せ場になるのが、やはりゲームの内容を再現する、ブタの住む建造物に巨大パチンコによって、鳥たちが弾丸となって次々にぶつかっていくアクションだ。このシーンが、あまりにも異様なのである。卵を奪われた親たちが、我が子を取り返すために必死になっているとはいえ、果たして、自ら建造物に体当たりするという行動に出るだろうか。他にもっといい方法はなかったのだろうか。前半でグループセラピーなど、リアリティのある人間ドラマを丁寧に作り上げてきたことで、原作のゲーム自体がもともと持っていた異常性が際立ってしまっているのである。だが、この活劇には、これが著しく異常であるからこその、凄まじい勢いを感じるのも確かだ。
バードアイランドにやって来たブタは、島にいろいろな物資を持ち込み、資本主義的な文明を築いていく。ブタたちはカウボーイの恰好をして、素朴な島民に享楽の味を教え、白人的な価値観を浸透させようとする侵略者である。それに対抗する象徴が、本作にも登場するハクトウワシ、すなわちアメリカン・イーグルである。アメリカの先住民たちは、ハクトウワシを聖なる鳥として崇め、その羽を頭に飾っていたという。つまり、アメリカ侵略への先住民の精神が、『アングリーバード』の戦いに重ねられているのである。