東出昌大、池松壮亮、菅田将暉……繊細な演技が浮き彫りにする『デスノート』の本質
2006年、TVアニメ版が放送され、藤原竜也と松山ケンイチ主演による実写映画版が公開されるなど、大ヒットコミック「DEATH NOTE」がメディアミックスの展開による映像化作品によって、さらなるブームを起こしてから、今年でちょうど10年になる。最近になって「DEATH NOTE」が、映像分野で再び盛り上がりを見せている。
窪田正孝、山﨑賢人が主演する、2015年のTVドラマ版をはじめとして、映画版の続編となる『デスノート Light up the NEW world』が今年10月の公開を控え、さらにNetflixが制作するアメリカ実写版では、ハリウッドでいま最も注目されている若手監督、アダム・ウィンガードがメガホンをとる。
『デスノート Light up the NEW world』は、前作から10年後の世界を舞台に、6冊のデスノートをめぐって新しい戦いが繰り広げられる。映画ファンにも評価が高かった、人気コミックの映画化作品『アイアムアヒーロー』の佐藤信介が監督を務め、主演に東出昌大、池松壮亮、菅田将暉ら若手実力派俳優3人を配役するなど、かなり期待できそうな要素が揃っている作品だ。
映画公開に先駆け、本編の前日譚となるスピンオフドラマ『デスノート NEW GENERATION』3部作が、動画配信サービス「Hulu」によって制作、公開された。佐藤信介監督をはじめ映画スタッフが再集結して製作された本作は、映画の主要キャラクター3人、それぞれが主人公となって物語が進み、映画本編の内容を期待させるとともに、作品の持つ本来のテーマと時代性とのつながりが強調されていて、見応えのあるものになっていた。今回は、その内容から分かってくる点を中心に、「DEATH NOTE」の本質について考察してみたい。
東出昌大が演じる、デスノート対策本部特別チーム捜査官「三島創(みしま つくる)」。「三島篇・新生」では、彼が警視庁の「キラ対策室」に配属される場面から始まる。デスノートについて細かでマニアックな情報まで調べ上げ、ユニークな視点から犯罪を解決する優秀さを見せる三島は、キラ事件収束後、前作で対策本部の指揮を執っていた夜神総一郎の意向を引き継いで、キラ事件当時、お調子者だった松田が取り仕切る、今では窓際部署となってしまった対策室の中心的存在となっていく。そして、新たなデスノートによる連続殺人「新生キラ事件」が発生したことにより、本格的な「デスノート対策本部」がつくられることになるエピソードが描かれる。ちなみに、デスノート犯罪の特性から、対策チームのメンバーは慣例により偽名を名乗らなければならない。三島創という名前も偽名である。
池松壮亮が演じる、名探偵L(エル)の遺伝子を受け継ぐ後継者「竜崎」。「竜崎篇・遺志」では、キラ事件後に名探偵Lの名を襲名した男が、国際的な難事件を解決する様子が描かれる。用意されたたっぷりのお菓子を見て、「ガキじゃあるまいし」と語る彼は、激務からか髪には白髪が混じり、全身を黒いファッションで包んでいる。さらに、世間ずれしたリアリストに描かれるパーソナリティは、前作のイメージとは真逆であり、彼が意識的に前作のLから脱却しようとする意志を示している。だが、プライヴェートでは喫茶店でショートケーキを注文し、「ひょっとこ」のお面もかぶってみせる、お茶目な一面を描いてもいる。
前作でLを演じた松山ケンイチの、不自然な声の抑揚と、おかしな間で言葉を切るエキセントリックな話し方を駆使した演技は神がかっていて、鮮明に覚えている観客も多いだろう。このキャラクターをふまえ、新たなLを映画本編で池松壮亮がどういうプランで演じるのかは、とくに見ものである。