『スクール・ウォーズ』は今こそ再評価されるべきだ 大映の“熱い”作風と、長尺ドラマの豊かさ
大映ドラマらしさ溢れる第二部の魅力
高校を立て直すために滝沢はまず校門の前に立ち、生徒たちの服装の乱れを注意するところからはじめる。校門の前で生徒を取り締まる先生が主人公の側の正しい行動として描かれたのは今の視点で見ても新鮮である。こう書くと滝沢が聖人君子のようだが、そんな滝沢でも苛立ったり、学校のことに夢中になるあまりに家庭をないがしろにして妻と別居状態になったりといったダメな部分をしっかりと見せることで、人間臭さを見せていく。生徒たちには正面からぶつかり、間違っていれば真剣に叱るが、感動すればすぐに泣いてしまう。そんな滝沢は「泣き虫先生」と呼ばれ生徒たちと信頼関係を築き上げていく。校内暴力の派手さに較べると滝沢の物語は地道だが、最終的にそんな地道な行動が勝利する姿をちゃんと描いた意義はやはり大きいのではないかと思う。
第7話になると三年生が卒業し、新たな学生が入学してくる。そこで登場するのが、札付きの悪と言われる不良の大木大助(松村雄基)と、そんな彼の親友であるイソップこと奥寺浩(高野浩和)だ。
ここから第二部となり、滝沢のラグビー部での指導が本格的にスタートするのだが、第2部には本作を代表する名場面が次々と登場する。初めて対決したライバル校に109対0の圧倒的な点差で負けてしまう場面、大木をかばうために身体が弱いイソップが懸垂をしようとする場面。そして、身体が弱かったイソップが病死する場面など、『スクール・ウォーズ』で語り草となっている名場面の多くは、この第二部にそろっている。
同時に、ここから大映ドラマのテイストが一気に濃くなる。大映ドラマとは大映テレビで制作された一連のドラマのことで、山口百恵が主演を務めた『赤いシリーズ』や『スチュワーデス物語』(ともにTBS系)などがある。
共通する傾向としては、主人公の出生の秘密や、運命の出会いといった物語性の高さと激しい熱量をともなった台詞とキャラクター、そして突然訪れる登場人物の死といった、盛り上がる展開が、これでもかと続くことだ。冒頭に書いた芥川隆行のナレーションも同様で、とにかくすべての要素が熱く、ドラマらしさが全面に押し出される。
出演俳優やナレーションの中には、作品を跨っての起用がされたりと、一種のスター制度が成立していたのも大映ドラマの特徴だ。実話を元にしている『スクール・ウォーズ』が、急に大映ドラマらしくなるのは、当時の大映テレビの看板俳優とでも言うべき、松村雄基と伊藤かずえと鶴見辰吾が出揃ったからだろう。
中でも、伊藤かずえが演じた富田圭子が凄い。富田は第一部から登場し、後にキャプテンとなる森田光男(宮田恭男)の恋人として登場したのだが、当初は高校の馬術部に所属し、三年の先輩にしごかれる森田を助けるために馬に乗って助けに来る場面や、ラグビーが好きで、ボールの形が似ているからという理由でレモンをいつも片手で持っているといった、他のキャラクターに較べると明らかにリアリティの水準が違う謎の美少女として登場する。
富田は、複雑な家庭環境を抱えており、実は名村グループと呼ばれる財閥の総帥・名村謙三(内藤武敏)の隠し子で、鶴見辰悟が演じる名村家の三男で「黒騎士」というロックバンドのボーカルを務める名村直とは腹違いの兄妹の関係になる。対して、大木大助は名村謙三を父の敵として恨んでおり、そのことが原因で二人を激しく憎むようになる。他にも大木と名村直の決闘が原因で、川浜高校の女子マネージャーが事故死するといった怒涛のストーリー展開が続くのだが、この辺りの因縁話が『スクール・ウォーズ』を語る際に、話題になることはほとんどないように思われる。
同じように激しく感情が揺さぶられるエピソードでも、大木とイソップの友情にまつわる話は多くの人が覚えていることを考えると、少し意外だが、このあたりの先が読めない物語性は今回見ていて新鮮だったので、はじめて見る方は注目してほしい。