尾野真千子、視聴者を“突き刺す”演技の凄みーー里親の苦悩と葛藤をどう表現した?

 美奈の苛立ちと不安を描くことで、虐待していた母親の問題を他人事ではないと想像させることに本作は成功しているのだが、『Mother』で虐待するシングルマザーを演じていたことを考えると、このために尾野を起用したのかもしれない。実際、見ていてやりきれないなぁと思ったのは、お試し行動よりも、美奈の父・追川真美(藤竜也)とハジメがピアノを弾いている時に、「お願いだから、余計なことしないでもらえますか!」と美奈が怒る場面で、他の登場人物の鬱陶しさが霞んでしまうくらい気まずいものがあった。

 尾野真千子の刺々しい演技を見ていると、ハジメよりも、美奈の抱えている心の問題の方が厄介なのかもしれないと思った。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『はじめまして、愛しています。』
テレビ朝日系
毎週木曜日夜9時〜
出演:尾野真千子、江口洋介、横山歩ほか
脚本:遊川和彦
公式サイトhttp://www.tv-asahi.co.jp/hajimemashite/

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