“攻め”の菅田将暉と“受け”の池松壮亮、喋るだけの75分ーー『セトウツミ』で見せつけた演技力

 

 0話からエピローグまで、8つのテーマについてトークが展開されるという構成。そのお題も“スケールの小さな話”ばかりであり、それを75分間、ほぼ二人だけの会話で成り立たせるというのは、どちらかが走りすぎても、待ちすぎても破綻してしまう。池松は「ほぼアドリブはなかった」という話だが、菅田が発する言葉を受け止めたり流したり、跳ね返したり……と緩急自在に操り“やらない”演技を披露した。一方の菅田も「やっているうちに煮詰まってきた」と言いつつも、好きな時に好きなペースで読めるという原作コミックの特性を理解しつつ、実写ならではの物理的な時間を意識した奥行きのある瀬戸を演じた。

 「こんな絶妙な二人いるか?」というコミックの持つファンタジー的な部分を持ちつつ、“日常感”がひしひしと伝わってきて、観客に寄り添うような親近感を持つ瀬戸と内海。池松と菅田だからこそ成り立った“セトウツミ”といえるだろう。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■公開情報
『セトウツミ』
公開中
監督:大森立嗣
出演:池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ
(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

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