『ヒメアノ〜ル』『葛城事件』……日本の“バイオレンス映画”が活気づいている背景

和製バイオレンス映画、ブームの背景

 ヘビー層である映画ファンの評価を得れば、彼らがSNSで広めることによってフォロワーにいるセミライト層以上からも注目を集める。そのセミライト層に受ければ、今度はライト層にも広がる可能性が出てくる。大規模の宣伝が難しいタイプの作品こそ、SNSでの口コミは大事なことだ。とくに自ら積極的にフォローしている人物から直接得られる情報というのは、信頼度が高いものである。

 このようにして注目度が増している現代型バイオレンス映画は、いずれも日常生活の中で発生する暴力を、現実から完全にかけ離れたものとして描かないことが共通している。舞台が家族の中や学校の中であったり、主人公はどこにでもいる平凡な青年で、ヒーローと呼ぶには程遠い存在であったり。それは映画そのものが、絶対的な非現実の象徴として求められていた時代から、観客のリアルな体験に根ざしたものが必要とされる時代に変化したということに他ならないのだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『葛城事件』
6月18日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
出演:三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈
監督・脚本:赤堀雅秋
配給・宣伝:ファントム・フィルム
2016/日本/カラー/DCP/アメリカンビスタ/120分/PG12
(c)2016「葛城事件」製作委員会 
公式サイト:katsuragi-jiken.com

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