『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』はなぜ映画に? 世代別マーケティングの観点から考察
高齢化が叫ばれて久しい。具体的な数字で見ると、2015年8月1日現在、50歳以上の日本人は約5742万人であり、総人口に占める比率は約45.8%となっている(詳細は後述するが、50歳以上というのは、テレビ視聴率の階層でいうM3・F3に該当している)。(※1)
また、2015年の「映画館での映画鑑賞」に関する調査では、直近1年以内に映画館で映画鑑賞をした人は全体で35.9%であり、そのうち実写の邦画を見る層としては、男性70代・女性60代・男性40代・男性60代・女性10代・女性50代・女性70代…という順で、人口のボリュームゾーンである高齢者が映画鑑賞の割合においても多数を占めている。(※2)
さて、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅in台湾 THE MOVIE』であるが、そもそも、(ご存知の通り)テレビ東京の「土曜スペシャル」という2時間特番枠の単発番組として始まっており、これまでに22回も放送されているほどのアタリ企画である。最高視聴率15.3%(2008年3月22日)を筆頭に、高い数字を叩き出してきた。
この15.3%というのは、関東エリアの世帯視聴率であり、この数字を階層ごとに見てみると、4-12歳の男女:0.3%・13-19歳の男女:0.7%・20-34歳の男性:2.5%・35-49歳の男性:5.8%・50歳以上の男性:16.0%・20-34歳の女性:3.2%・35-49歳の女性:4.0%・50歳以上の女性:14.4%と、50歳以上の男女で構成された視聴者が圧倒的多数を占めている。
視聴率とは、テレビの番組やCMがどのくらいの世帯や人々に見られているかを示すひとつの指標であり、ビデオリサーチが行う調査によって数字が発表される(過去に、ニールセンという競合社もいたが既に撤退)。具体的には、ピープルメータ・オンラインメータシステム・日記式アンケートなどによって計測されている。(※3)
世間一般に視聴率として話題となるのは、「関東エリア」の「世帯視聴率」がほとんどである。これは、東京都(島部を除く)・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県からなる関東エリア内の600世帯にピープルメータを設置して、世帯としてどのくらいの割合が番組を視聴していたかを計測した数字のことを指す。(※4)
また、視聴者の性別・年齢層も計測しており、C層:4-12歳の男女・T層:13-19歳の男女・F1層:20-34歳の女性・F2層:35-49歳の女性・F3層:50歳以上の女性・M1層:20-34歳の男性・M2層:35-49歳の男性・M3層:50歳以上の男性、といった区分などで発表されている。(※5)
視聴率は、本来、広告取引の際にテレビの媒体力や広告効果を測るひとつの指標であり、番組の評価軸のひとつでしかないはずであるが、民放は広告収入に依存しており、また、視聴率以外の具体的な評価数値がない(ギャラクシー賞などのテレビ番組を顕彰するシステムはあるが、その性質上、評価数値にはなり得ない)ため、テレビ番組の在り方を左右する唯一にして絶対の影響力を持っているのである。
蛇足になるが、昨今の「テレビがつまらなくなった」という遠因は、この視聴率主義にあることは否定できないだろう。何がウケるのか、言い換えれば、数字が取れたものを追い求めれば、似たような番組や企画が生まれてしまうのは必然だからだ。その中で、テレビ東京がある種の独自性を発揮しているひとつの要因は、他局と比べ、系列ネット局が少ない(例えば、日本テレビは27局あるが、テレビ東京は5局)ため広告収入が少なく、それゆえ、制作費も少ないからと言えるだろう。つまり、制作費の足枷があるため、他局と似たような企画ができないこともあり、自ずと独自性が発揮されてしまうのだろう。