『女が眠る時』ビートたけし×西島秀俊×ウェイン・ワン監督インタビュー
ビートたけし×西島秀俊×ウェイン・ワン監督が語る“映画と女” 新作『女が眠る時』インタビュー
「皆さんには、ぜひ想像力を発揮させていただきたい」(ワン)
ーー“北野武監督”として、ワン監督の姿はどのように映ったのでしょうか?
たけし:ワン監督はコンテンポラリーというか、現代映画作家だと思う。自分が監督した映画で取材を受ける時とかに、記者からよく「あなたはこの映画で何を言いたいんですか?」って質問されるんだよね。すると俺は、「言葉で説明できるぐらいなら映画は撮らねえだろ」っていうようなことをよく言うんだけど(笑)。今回の映画は、「あなたはこの映画で何を言いたいんですか?」っていう質問を逆手に取って、「あなたはこの映画をどう思う?」って問いかける、逆襲の映画だと思う。作り手側がこう思ってるってことは絶対に言ってないし、性別も年齢も教養度も全部含めて、それぞれが全部違う意見を持っても構わないと。そういう映画で演じてくれって言われると、どうにでも解釈できるような役にならないといけない。だから監督が「演じないでくれ」っていうのはそういうことだと思う。ビートたけしっていう見た目の俺が、言われた通りに動く。その動きを観客がどう解釈するかだよね。
ーー本当にいくつもの解釈があると思います。何度も観たくなる映画でもありますね。
西島:きちんとしたストーリーがベースにありつつ、これだけ観客に委ねられた映画っていうのはなかなかないんじゃないですかね。最後のシーンだけがリアルであとは全部イメージっていう人もいるだろうし、もしかしたら最初のプールサイドだけがリアルであとはイメージっていう人もいるかもしれない。この作品を観た人の数だけストーリーと解釈があって、それが全部正しい。監督が特に何か正解を設定しているわけでもないですし。よく言いますけど、“観客のみなさんが観ることによって映画が完成する”というものの、本当の形だと思います。だから、観る人によっては本当に楽しめる、自分が最後に完成させるっていう映画だと思いますね。
ーーこのような様々な解釈ができる作品にした意図みたいなものはあるんでしょうか?
ワン:私が映画学校に通っていた頃、それも初日だったんですが、教授が私のところにやってきて、プラトンの『洞窟の寓話』について話してくれました。ストーリーはとてもシンプルで、洞窟の中に、鎖で繋がれた囚人たちがいる。彼らの前には大きな壁があり、彼らの背後では炎が燃え盛っている。その火と囚人の間で、人形使いたちが操り人形を使って、囚人たちに“影”で物語を見せていく。幼い頃からその洞窟にいる囚人たちには、その操り人形の影だけが、全人生のリアリティなわけです。映画も同じなんです。政府にも、ハリウッドにも、日本映画にも言えることですが、こういうふうに考えなさいということを、我々は押し付けられているのではないでしょうか。人間の脳はとてもクリエイティブなもので、一瞬のうちにものすごい想像力を発揮する。僕は映画作家として、観客をプラトンの洞窟の中に置きたくないんです。この映画をご覧いただく皆さんには、ぜひその想像力を発揮させていただきたいですね。
(取材・文=宮川翔)
■公開情報
『女が眠る時』
2月27日(土)公開
監督:ウェイン・ワン
原作:ハビエル・マリアス「女が眠る時」
脚本:マイケル・K・レイ、シンホ・リー、砂田麻美
出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ、新井浩文、渡辺真起子、リリー・フランキー
(c)2016 映画「女が眠る時」製作委員会
公式サイト:http://www.onna-nemuru.jp/