あの偉人たちはカンフーの達人だった!? Netflixドラマ『マルコ・ポーロ』に見る伝奇モノの神髄
アクション以外にも、同作にはトンデモ要素が盛りだくさん。例えば、フビライ殺害を試みる集団として、十字軍の要人らを暗殺したとされる伝説のカルト教団〝暗殺教団″も物語に絡んでくる。また、フビライの側室を養成する〝欲望の館″なるハーレムが登場するのも印象的。ここで女性たちは性技を磨き、フビライにめとられることを目指すのである。欲望の館だけでなく、数話に一度のペースで全裸女性が画面を埋め尽くす。
こういった一見ムチャな設定は、実は記録を拡大解釈したものであることがわかる。「東方見聞録」には百の眼のモデルとなった僧に触れている部分もあり、宋の宰相・賈似道も元は武闘派の軍人だ。暗殺教団に似た記述も同書にはあり、欲望の館は当時の一夫多妻制・オルドから拡がった設定だろう。
ドラマにかけられた制作費は9000万ドル(約90億円)にのぼったという。その豪華なセットや美術をみれば、本作が単なるトンデモドラマでないことは一目瞭然だ。多少の洋風アレンジが入ってはいるものの、そこにある生活感や臨場感は並みのドラマには真似できないレベル。ただし、登場人物全員が英語で話すので、これがまた何とも言い難い奇天烈な印象を産み出しているのだが……。圧倒的なスケールで、史実をもとに奇想天外な物語をつづる。『マルコ・ポーロ』はまさに伝奇モノの王道を行くドラマなのである。
先日、シリーズ屈指の人気キャラ・百の眼が主人公のスピンオフ短編が配信を開始したばかり。こちらでは、彼が盲目になった理由が、またもトンデモな演出でアクションたっぷりに描かれている。さらに、今夏からスタートするシーズン2には、『グリーン・デスティニー』のミシェール・ヨーが出演することも発表された。伝奇アクションとして、ますます加速するであろう新シリーズを前に、シーズン1をぜひ復習しておいてほしい。
■藤本 洋輔
京都育ちの映画好きのライター。趣味はボルダリングとパルクール(休止中)。 TRASH-UP!! などで主にアクション映画について書いています。Twitter
■公開情報
『マルコポーロ』
Netflixにてオンラインストリーミング中
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