放送開始から40年、仏同時テロにも即応した米長寿番組「サタデー・ナイト・ライブ」の歴史

放送日のチャート SNL出身の人気映画『ウェインズ・ワールド』の衣装

 この流れをふまえると、アメリカ時間11月13日、金曜日午後に起きたパリ同時多発テロを受けてオープニングを変更したのは、金曜日夜か土曜日のドレス・リハーサルの前だろう。オープニングのために用意していたコントやセットはお蔵入りとなるが、かつて同時多発テロで傷を負ったニューヨークがパリを悼むのは当然と考えての変更だったと想像できる。2001年9月11日の同時多発テロ後の生放送では、当時のニューヨーク市長であるルドルフ・ジュリアーニとNY市警の警察官、消防士たちが並び、プロデューサーのローン・マイケルズもカメラの前に立った。ジュリアーニ市長が発した「ライブ・フロム・ニューヨーク、イッツ・サタデーナイト」という決め台詞は、「ライブ=生」とも受け取ることができ、いまだに語り継がれる放送回となっている。こんなことができるバラエティ番組は、世界中ほかにないだろう。

 ちなみに、SNLの笑いの方向性として一貫しているのは、政治ネタを積極的に取り入れているところだ。先週の放送には大統領選に共和党から出ると言われているドナルド・トランプ氏が出演しコントを演じ、ここ数年で最高の視聴率を取った。1ヶ月前にはヒラリー・クリントン氏が出演し、いつも番組でヒラリーに扮しているケイト・マッキノンと共演した。同じく大統領選に出馬表明しているバーニー・サンダース上院議員を模したコントも多く放送されており、政治が一番の揶揄ネタとして扱われている。SNLが政治や時事ネタを積極的に扱い笑いに転化することで、アメリカ人の政治リテラシーが鍛えられているような気がする。もちろん番組側はトランプやヒラリーを出演させることで話題性と視聴率が上がることを企んでおり、「大統領選に出馬する全ての候補者に平等に出演の権利が与えられるわけではない」と批判するメディアもある。だが、アメリカ人の政治への興味の高さは、大統領が国民投票で決まるだけではなく、こうした番組の効果もあるのではないか。パリへの哀悼を冒頭で述べることも、トランプを出演させることも、SNLはバカ騒ぎするだけお笑いバラエティ番組ではなく、ジョークや音楽からアメリカの風俗を浮き彫りにする番組だと考えると納得だ。

アメリカの人気クイズ番組のパロディ
生放送ならではの事件も。シンニード・オコナーが出演した際、リハーサルと本番で違う動きをし、生放送ではカメラの前でローマ法王の写真を破った

 ニューヨークで行われているエキシビションは、今のところ終了日は決まっていない。ニューヨークに行く機会があったら、アメリカの一つの現象として、長寿人気番組の裏側を覗いてみるのもおすすめだ。

実際のスタジオと同じセットがエキシビジョン用に作られた。エキシビジョン参加者は、ここで生放送の雰囲気を体感することができる

(文・写真=小川詩子)

エキシビション:http://www.snltheexhibition.com/

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