サイモン・カーティス監督が語る、『黄金のアデーレ』制作秘話とキャスティングの重要性

『黄金のアデーレ』監督インタビュー

 クリムトが描いた1枚の肖像画「黄金のアデーレ」を巡り、オーストリア政府を相手に裁判を起こし、肖像画の返還を求めた実在の女性、マリア・アルトマンを描いた『黄金のアデーレ 名画の帰還』が11月27日より公開される。アカデミー賞(R)女優のヘレン・ミレンを主演に迎え、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズら、国際色豊かなキャストも話題になっている本作。メガホンをとったのは『マリリン 7日間の恋』のサイモン・カーティス監督だ。今回、東京国際映画祭で来日を果たしたカーティス監督に、実話を映画化するにあたってのこだわりや、キャスティングの重要性について、話を聞いた。

「人生の終わりに近い女性が、最後の闘いに挑むところに惹かれた」

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サイモン・カーティス監督

ーーまず、本作を監督することになった経緯を教えてください。

サイモン・カーティス(以下、カーティス):ある時、マリア・アルトマンに関するBBCのドキュメンタリーを観て、その話に非常に興味を持ったんです。その話の中にも、もっと裏があるんじゃないかと思って。映画として描けば、ものすごく面白くなる題材だと思ったのがきっかけですね。

ーー具体的にどのような部分に興味を持ったのでしょうか?

カーティス:82歳という人生の終わりに近い女性が、最後の闘いに挑むという点です。過去に起こった様々な酷いことに対して、正義を求めるという。彼女がその闘いに挑むということに1番惹かれました。

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(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

ーー本作では大きく分けて3つの時代が描かれていますが、撮影で苦労した点も多かったのでは。

カーティス:そうですね。1本の映画なんですが、2〜3本の違う映画を撮っているような感覚でした。例えば、マリアが車の中でチョコレートドーナツを持っているシーンをロンドンで朝撮って、その後すぐに道を渡ったところにあるスタジオ内で、クリムトがアデーレの絵を描いているシーンをドイツ語で撮ったりしたんです。とても奇妙な感覚でしたね。

ーー撮影はロンドンとロサンゼルスとウィーンで行われたんですよね。監督自身が印象に残っているシーンはどこですか。

カーティス:ロンドンは私が住んでいる場所でもありますし、ロサンゼルスでの撮影は2〜3日だけでした。やはり1番印象的だったのはウィーンです。物語の骨格となる場所でもありますから。第二次世界大戦を期に、マリアが家族を残して国を離れて行くシーンはもちろん、ずっとウィーンから離れていたマリアが、何十年ぶりにウィーンへ戻るシーンは、撮影していても非常に感動的でした。ウィーンでの撮影は大変というよりはパワフルでしたね。過去の写真や映像を観て、その時代を再現させたので。

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(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

ーーなるほど。本作ではクリムトの名画「黄金のアデーレ」がキーアイテムとなりますが、監督も実際に実物をご覧になりましたか?

カーティス:はい、見ました。非常に力強い印象を受けました。事前にポストカードなどでも見ていましたが、やはり本物を見たときの感動は言葉にならないぐらい素晴らしかったです。私は何回か実物を見たんですが、アメリカでプレミア上映したときには、その絵画の前でパーティーをしたりもしたんです。

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