『トランスポーター イグニション』は新たな才能を発掘するか? ヨーロッパ・コープ映画の魅力と役割

『トランスポーター イグニション』の魅力

 例えばそれまで脇役ばかりだったジェイソン・ステイサムを『トランスポーター』で主役に抜擢し、アクションスターとして大ブレイクさせた。近年では、それまでアクションのイメージのなかったリーアム・ニーソンを主演に『96時間』を大ヒットさせ、多くのフォローワーを生み出すことになった。また、俳優だけではなく、『トランスポーター』の監督であるルイ・レテリエは、同作の続編やジェット・リーの『ダニー・ザ・ドッグ』などをベッソンの下で監督し、『インクレディブル・ハルク』『グランド・イリュージョン』などの大作を任される人気監督の一人となった。彼らは皆、ベッソン学校の卒業生とも言えるだろう。

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 『トランスポーター イグニション』は、そんなベッソン学校の「生徒」であるカミーユ・ドゥラマーレの監督作品だ。カミーユはヨーロッパ・コープの編集マン出身で、本作が監督2作目である。編集出身らしく、全編をテンポの良くまとめている。アクションシーンの迫力や、コミカルなシーンの間の取り方など、すべてが堅実だ。その手腕から、今後も幅広く活躍することが期待される。主演のエド・スクレインはステイサムに比べると存在感で見劣りするのは否めないが、一方で主人公の父親を演じる助演のレイ・スティーブンソンが輝いている。レイは『パニッシャー ウォーゾーン』のパニッシャー役など、強面なイメージの強い役者だが、本作では自分を拉致した女性を口説き出すなど、コミカルな中年男性を好演している。

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 ヨーロッパ・コープ映画は、きっとこれからも一定クオリティのアクション映画を量産し続けるだろう。そこから新たな才能が排出されることもあるだろうし、俳優の新境地が開拓されることもあるはずだ。『96時間』のように、映画界に一つのトレンドを巻き起こすこともあるかもしれない。いわば未来の才能を青田買いできるのだ。これこそ、ヨーロッパ・コープ映画の最大の魅力といえるだろう。

■加藤ヨシキ
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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■公開情報
『トランスポーター イグニション』
10月24日(土)全国ロードショー
監督:カミーユ・ドゥラマーレ
製作:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン、アダム・クーパー、ビル・コラージュ
出演:エド・スクレイン、レイ・スティーブンソン
(c)2014 – EUROPACORP – TF1 FILMS PRODUCTION/Photo:BrunoCalvo
公式サイト:tp-movie.com

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