『薔薇の名前』の著者ウンベルト・エーコによる長編歴史小説『プラハの墓地』が文庫化
イタリアの作家ウンベルト・エーコによる歴史小説『プラハの墓地』の文庫版が、8月31日に東京創元社の創元ライブラリより刊行された。
エーコは『薔薇の名前』で知られる作家であり、哲学者、評論家、記号論学者としても活動した知の巨人。東京創元社は昨年『薔薇の名前[完全版]』を刊行している。『プラハの墓地』は2010年に発表された長編歴史小説となる。
本作は、のちに史上最悪の偽書として悪名をとどろかせる『シオン賢者の議定書』を、文書偽造家シモーネ・シモニーニがいかにして作り上げたかを描く物語。イタリア統一やパリ・コミューンなど、19世紀後半の史実と巧みにリンクさせて綴られている。主人公シモニーニ以外の登場人物はほぼすべて実在の人物だという。
『シオン賢者の議定書』は、のちにユダヤ人排斥運動やさまざまな陰謀論と結びつき、ナチスによるホロコーストの典拠のひとつにまでなるなど、後世に重大な悪影響をおよぼした偽書である。現在もなお一部アラブ世界では読み継がれているとされる。
エーコは偽書成立のあらましを豊富な史料をもとに描くと同時に、憎しみが差別をいかにして生み出すのか、そのメカニズムを明らかにしようとしている。大部にして重厚な歴史小説でありつつ、いまなお世界中で起きている多くの戦争や差別などに対する問題提起の書としても読める一冊となっている。
本文中には、著者エーコ自身のコレクションであるフィユトンの挿絵など、50点以上の挿画が収録されている。
■書誌情報
『プラハの墓地』
著者:ウンベルト・エーコ
発売日:8月31日
出版社:東京創元社(創元ライブラリ)