楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』が2026年国際ブッカー賞を受賞 台湾を旅する女性2人を描く

 楊双子による『台湾漫遊鉄道のふたり』(中央公論新社)がイギリスの2026年国際ブッカー賞を受賞した。

 英語圏で最も注目される文学賞のひとつを台湾の小説が受賞するのは初めて。原作が中国語の作品としても初となる快挙の『台湾漫遊鉄道のふたり』。過去に日本人の受賞者はおらず、最終候補作品として2020年に小川洋子の『密やかな結晶』、22年に川上未映子の『ヘヴン』、25年に川上弘美の『大きな鳥にさらわれないよう』が選出された。

 本書は、2024年全米図書協会(National Book Foundation)による全米図書賞(National Book Awards)翻訳部門を受賞しており、今回、世界的に権威ある国際ブッカー賞とのダブル受賞という快挙を成し遂げた。

 「千鶴ちゃん、これは運命の出会いよ!いっしょに台湾を食べ尽くしましょう!」炒米粉、滷肉飯、冬瓜茶……あなたとなら何十杯でも――結婚から逃げる日本人作家・千鶴子は、台湾人通訳・千鶴と“心の傷”を連れて、1938年、台湾縦貫鉄道の旅に出る。昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴とともに、台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り……国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、傷つきながら、ふたりの旅の終点は――日本でも愛される台湾の食文化と、歴史に翻弄された複雑なアイデンティティが、日台の女性同士による会話劇と旅行記で味わえる、何重にも美味しい一冊。

著者情報
楊双子(Yang Shuang Zi/よう・ふたご)
1984年生まれ、台中市烏日育ち。本名は楊若慈、双子の姉(「楊双子」は双子の妹「楊若暉」との共同ペンネーム)。小説家、サブカルチャー・大衆文学研究家。本作が初邦訳の小説作品。その他の著書に『花開時節』『撈月之人』『花開少女華麗島』『開動了!老台中』(未訳)や、著者原作のマンガ『綺譚花物語』(サウザンブックス)がある。現在は台湾の歴史を題材にした小説執筆に力を注いでいる。最新小説『四維街一號』の邦訳が中央公論新社より2025年刊行。

英語版の訳者:リン・キン(Lin King /金翎) 
台北とニューヨークを拠点とする作家、翻訳家。プリンストン大学英文学部卒業、コロンビア大学美術学修士課程修了。2024年『台湾漫遊鉄道のふたり』英語版の翻訳で全米図書賞を受賞。その他の訳作に『台湾の少年』(游珮芸・周見信著)、『雲を運ぶ』(黄麗群著)などの英語版がある。小説執筆も精力的に行っており、作品は『One Story』『Boston Review』『Joyland』などに掲載され、PEN/ロバート・J・ダウ新進作家短編小説賞を受賞している。

日本版の訳者:三浦裕子(みうら・ゆうこ)
仙台生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。出版社にて雑誌編集、国際版権業務に従事した後、2018年より台湾・香港の本を日本に紹介するユニット「太台本屋 tai-tai books」に参加。文芸翻訳、記事執筆、版権コーディネートなどを行う。訳作に林育徳『リングサイド』、ライ・ホー『シャーロック・ホームズの大追跡』、呉明益『海風クラブ』、楊双子『四維街一号に暮らす五人』などがある。楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』で第10回日本翻訳大賞を受賞。

■書誌情報
『台湾漫遊鉄道のふたり』
著者:楊双子/訳:三浦裕子
価格:2,530円(税込)
発売日:2023年4月20日
出版社:中央公論新社

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