R-18文学賞出身・雛倉さりえ最新作『レテの汀』 過去の罪と向き合う旅路

 雛倉さりえによる『レテの汀』(講談社)が2月19日(木)に発売された。

 雛倉は16歳の時に執筆した短編「ジェリー・フィッシュ」が、第11回「女による女のためのR-18文学賞」の最終候補に選ばれ、映画化・書籍化されて話題となった。本作『レテの汀(みぎわ)』は前作『アイリス』以来約3年ぶりとなる待望の新刊小説。

 東京郊外の大きな家で、ひとり暮らしをしている柑(かん)。なるべく人付き合いを断ち、規則正しく無機質な日々を送っていますが、ある思いを胸に、亡き母の故郷である与那国島を訪ねることを決意します。それは、柑自身も覚えていないほど幼い頃に犯した、大きな罪と向き合うためでした。しかし思いがけず、小学6年生の甥っ子・伊吹(いぶき)もついてくることになり……。

 執筆の経緯をめぐるエッセイ「傷跡と生活」(2/21公開予定)では、「生活はつづく。どんな過去を抱えていても。10代や20代の頃の、自傷めいた日々はもう繰り返さない。私が私であることを諦めて、受け入れて、労わりながら、歩いてゆく。自分でも気づかないうちに、私はどこかでそう決めたのだろう。人生の転換点と呼べるほど大仰な決意ではない。ただ、風向きがほんのかすかに変わったような、ごく自然な流れで、生きかたを選んだ。」と綴られている。著者のコメントも公開されている。

応援コメント

・物語と並走するように、私のこわばった心もふっと緩みました。(…)私も現実に折り合いをつける意識を持ちたいと思えました。いま、この作品に出逢えてよかった!

・解決しない悩みをずっと抱えながら生きていく辛さ。人の顔色ばかり気にしている不自由さ。様々な生きづらさに寄り添って救う。旅の中で感じたあれこれ。静かな日常に光が射す。それでも侵した罪は消えない。しかしそれとどう向き合っていくか少し分かった旅だと思う。儚く脆い登場人物たち。危うい感情の連続で読み手も苦しくなりながら最後には希望が見える。

・柑は柑なりに精一杯に生きてきた。それでも、与那国島への旅は必要だった。柑だけでなく、柑の周囲の人々にもこの旅は必要だった。柑がたどり着いた心境にとても納得した。私は柑のような旅をしても同じような心境にたどり着けるかは、分からない。ただ、そう感じただけでも読んだ価値があった。答えが分からないからこそ日々悩み、これからも模索して生きていきたいと思った。

・正しさと生き方は自分の中で見つけていくしかない。ポキリと柑を摘むように静かながらも確かな感覚がある作品でした。(…)人なんてはっきりしている時の方が珍しいと背中を押してくれる導き方がとても素敵でした。何事も時間と労力はかかるけれどそれなりの答えはいつか見えてくる。それを自分にとって答えとするならばそれは理想なんだと思います。
(*NetGalleyに寄せられたコメントより抜粋)

著者プロフィール

雛倉さりえ(ひなくら・さりえ)
1995年滋賀県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科卒。16歳の時に執筆した短編「ジェリー・フィッシュ」が、第11回「女による女のためのR-18文学賞」の最終候補に選ばれる。同作は金子修介監督により映画化された。他の著作に『ジゼルの叫び』『もう二度と食べることのない果実の味を』『森をひらいて』『アイリス』がある。

■書誌情報
『レテの汀』
著者:雛倉さりえ
価格:2,090円(税込)
発売日:2026年2月19日
出版社:講談社

関連記事