“禁断の知識”錬金術をビジュアルでひもとく 『ビジュアル図鑑 錬金術の歴史』
『ビジュアル図鑑 錬金術の歴史』(河出書房新社)が2月25日(水)に発売される。
【画像】古代エジプトから現代の文学まで、錬金術の歴史を解説した書籍
西洋思想の源流であり、思想、科学、芸術などあらゆる文化に多大な影響を与えてきた錬金術。本書は、その歴史や理論を、西洋のみならず、イスラム、アジア地域も網羅し解説する決定版。貴重なヴィジュアルを用いて、錬金術の面白さから、美しさ、不思議さをも堪能できる一冊。
古代エジプトから現代の文学まで、錬金術の歴史を解説。西洋のみならず、イスラム、アジアの錬金術にも言及し、日本も登場。世界的な科学ライターである著者が、難解な錬金術の理論もわかりやすく解説。美しく、想像力が刺激される多彩な貴重図版多数掲載される。
著者フィリップ・ボールによる「はじめに」より一部掲載
錬金術と関連づけられた(正しいか間違っているかは別として)最も有名な人物たちの中には、当時において魔術師や降霊術師とさえ呼ばれた人たちもいた。アルベルトゥス・マグヌス、パラケルスス、コルネリウス・アグリッパなどだ。伝説のファウストは金の精錬技術を実践し、19世紀初頭にヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテがこの古い物語を再話した際にも、その人物像は浸透していた。錬金術は禁断の知識たる魅力を秘めており、卑金属を金に変えるという錬金術の中心的な探求は無駄だった、という今日的な確信も、その魅力にドンキホーテ的な刺激を加えるだけである。一方、19世紀から20世紀初頭にかけて、錬金術は内なる精神的知識の探求として再考された。そこには錬金術師たちが実際に何をしたか、何を考えたかについての歴史的解釈としては誤解があったにもかかわらず、錬金術の現代的魅力をいや増すばかりだった。世界を理解するための努力は、現代科学のしばしば冷たく非人間的な合理主義に屈する必要などなく、代わって想像力を刺激する飛躍を必要とした時代性を物語っているのである。
目次
はじめに
第1章:黒い土──錬金術の起源
解説=概説/青銅器時代の化学/レシピ/秘密/イスラムの錬金術師
ヴィジュアル紹介=ストックホルム・パピルスとして知られるギリシャの写本にある銀の製法(300年頃)/10世紀のペルシャの博物者による『シル・アル・アスラール(秘中の秘の書)』の後世の写本(1700~1899年)/アラビア語の錬金術の写本『七つの気候の書』より(13世紀)/バグダードで制作された『銀の水』の写本より(1339年)/ほか多数
人物伝=ジャービル・イブン・ハイヤーン(721年頃~815年頃)
第2章:錬丹術──東洋の錬金術
解説=概説/さまざまな金/永遠の命/インドの錬金術
ヴィジュアル紹介=中国浙江省出土のレリーフ付き青銅鏡(25~220年)/鉛化合物を除去するプロセスを示した宋応星編纂の『天公開物』掲載の木版画(1637年)/人体の「内部風景」を示す『内經図』/中国における不老不死の探究を示す『雲台仙瑞』(18世紀)/ほか多数
人物伝=葛洪(283年頃~343年)
第3章:クリソポエイア──金の探求
解説=概説/理論的にはできるはず/中世の金の製法/いったい何が起こったのか?
ヴィジュアル紹介=セビリャのイシドールスの『世界の応答と星の配置について』(1472年)/金の精製を示す『ヘルメスは博物館』に掲載された「ラムシュプリングの書」より(1692年)/『錬金術と薔薇十字団の概要』より(1760年頃)/『自然の秘密または精髄の書』の錬金術表(カタルーニャ)/創世記を錬金術的な解釈で概説する『カバラ・ミネラリス』(1675年頃~1700年)/ほか多数
人物伝=アルベルトゥス・マグヌス(1200年頃~1280年)
第4章:秘伝書──実用の錬金術
解説=概説/秘密の伝統/レシピ本/「金を作るなかれ、薬を作るべし」/秘密とビジネス/「白い金」
ヴィジュアル紹介=偽アリスとテレス『セクレトゥム・セクレトルム』より「驚くべき効能を持つ2つの石」を王に届ける場面/『哲学の真珠』に掲載されている「占星学的な人間」の木版画/『パラケルスス著作集』より(1676年)/『リプリーの巻物』より錬金術師が「七つの封印の書」の秘密を明かす図(1600年頃)/ほか多数
人物伝=パラケルスス(1493年~1541年)
第5章:「吹き屋」たち──錬金術の実験室
解説=概説/数々の用具/スピリットとエッセンス/実験室の発明/「光の担い手」
ヴィジュアル紹介=古代の伝説の錬金術師であるユダヤ婦人マリアの銅版画『黄金卓のシンボル』(1617年)より/ハンス・ヴァイディッツの版画『錬金術なる術は多くの者を欺きしなり』(1559年)/主にドイツ語で書かれた錬金術の小冊子『錬金術集成24』(1543年)より/ジュネーブの医師が錬金術テキストを研修した膨大な書籍『好奇心旺盛な化学図書館』(1702年)より/ほか多数
人物伝=ルペシッサのヨハネス(1310年頃~1366年頃)、ヨハン・ヨアヒム・ベッヒャー(1635年~82年)
第6章:世界は劇場なり──化学哲学
解説=概説/プラトン主義の復活/世界を扱う錬金術/錬金術と宗教
ヴィジュアル紹介=ヤーコブ・ベーメの肖像画(1677年)/『メルクリウス・トリスメギストゥス・ピマンダー、または神の力と叡智について』の注釈つき初版(1471年)/ハインリヒ・クンラートの代表作『永遠の知恵の円形劇場』(1595年)の挿絵/ナポリの有力貴族に献じられた『錬金術の処方箋』(1606年)より/ほか多数
人物伝=ハインリヒ・クンラート(1560年頃~1605年)
第7章:錬金術戦争──錬金術の論争
解説=概説/錬金術のペテン師/宮廷の錬金術/薔薇十字の覚醒/アンチモン戦争
ヴィジュアル紹介=『ヘルメス図書館』(1678年)に掲載された『パシリウス・ウァレンティヌスの12の鍵』の「第11の鍵」部分/イギリスの古物収集家の錬金術テキスト集『ブリタニア化学劇場』(1652年)より/錬金術から化学への移行の足掛かりとなったジャン・べガンの『化学入門』(1610年)より/『火工術の哲学』(1640年)より「物質的および非物質的自然全体」の図表/ほか多数
人物伝=バシリウス・ウァレンティヌス(15世紀の人物とされる)、クリスティーナ女王(1626年~89年)
第8章:坩堝──錬金術から化学へ
解説=概説/化学のキメラ化/最後の錬金術師たち/ついに実現した錬金術
ヴィジュアル紹介=アイザック・ニュートンが所有した『錬金術の新しき光』(1614年)の写本より/『錬金術の規定書』(1652年)より錬金術の知識が弟子へと受け継がれる様子を描いた版画/『ジェームズ・プライスによるいくつかの実験記録…1782年5月にギルフォードで行われたもの』(1782年)/『サイクロペディア、または諸芸諸学の百科事典』(1819年)より「ウルフ瓶」の図解/ほか多数
人物伝=ジョージ・スターキー(1628年~65年)、アイザック・ニュートン(1643年~1727年)
第9章:変容──文化における錬金術
解説=概説/オカルトの復興/心霊科学?/錬金術の芸術/文学における錬金術/世界の変容
ヴィジュアル紹介=『ヘルメス秘儀への示唆的な探究』(1850年)の著者、イギリスの作家メアリー・アン・アトウッドの写真/イシス・ウラニア神殿の召喚の図(1888年頃)/マックス・エルンストの『花嫁の衣装』(1940年)/ペートルス・ファン・デル・ボルヒトによる初期の錬金術の風刺画(1580年頃)/ヒエロニムス・ボスの『快楽の園』(1500年頃)に描かれた地獄/ほか多数
人物伝=ジョージ・リプリー(1415年頃~1490年)
索引/参考文献/図版クレジット
著者紹介
フィリップ・ボール(Philip Ball)
世界的に著名なイギリスの科学ライター。「Nature」誌編集長。科学と文化の関わりについて30冊以上の著作を発表。邦訳された著書に『ビジュアル 美しい元素の歴史図鑑』(創元社)、『かたち』『流れ』『枝分かれ』(3点、早川書房)、『音楽の科学』(河出書房新社)などがある。
■書誌情報
『ビジュアル図鑑 錬金術の歴史』フィリップ・ボール/訳者:辻元よしふみ、辻元玲子(河出書房新社)
著者:フィリップ・ボール/訳者:辻元よしふみ、辻元玲子
価格:6,490円(税込)
発売日:2026年2月25日
出版社:河出書房新社