賞金1000万円、連載即決定、海外デビュー実現!? 「LINEマンガ webtoon大賞」の狙いをキーマンが語る
「LINEマンガ」といえば、国内最大級の電子コミックサービスで、縦読みマンガwebtoon市場をも牽引する巨大プラットフォームだ。右肩上がりの成長を続けているが、また新たなフェーズに突入しようとしている。
最優秀賞の賞金はなんと1,000万円、さらにLINEマンガでの連載権、そして海外向けのプラットフォームでの配信権まで獲得できる異例のコンテスト「LINEマンガ webtoon大賞」を実施するからだ。
なぜ今、これほど大規模な賞を開催するのか? そこには、急成長するLINEマンガ、そしてwebtoon市場に対して抱く野望があるという。
オリジナルのwebtoon・横読みマンガを生み出す企画・制作・編集部門であるLINEマンガ WEBTOON STUDIOを牽引する春木博史氏と長田英将氏の2人に、その真意と、LINEマンガにおけるwebtoon制作の最前線について聞いた。
「LINEマンガ webtoon大賞」の凄み
――まずはお二人が普段、LINEマンガでどのようなお仕事をされているか教えてください。
春木:私は現在、JP Content Production室の室長を務めています。この室は、「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」としてwebtoonをふくめたマンガ制作に関わる部署です。私はその統括をしつつ、海外拠点とのやり取りや、日本の既存マンガをwebtoon化するプロジェクトを手掛けております。
長田: 私も同じくJP Content Production室にいて、第2編集チームのマネージャーをしています。第2編集チームは、分業制webtoonスタジオの制作を集中的に担っているチームです。分業制における各工程の作家さんの募集・アサイン、制作進行の管理を担う各編集メンバーのマネジメントを行っています。
――「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」というのは、いわゆるマンガ編集部になるのでしょうか?
長田:そうですね。「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」は横読みマンガも制作していますが、第2編集チームはwebtoonに特化してオリジナル作品を生み出すための企画、制作、編集を担っているチームです。
webtoonの制作体制は、大きく分けると2つあります。ひとつは一人の作家さんがアシスタントさんと共に制作する、いわゆる従来の横読みマンガのスタイルです。
もうひとつは「原作(シナリオ)」「ネーム(構成)」「背景」「線画」「着色」「仕上げ」といった工程に分け、それぞれのスペシャリストがチームを組んで一つの作品を作り上げる方法です。現在はこの「分業制」に力をいれています。
春木:webtoonはフルカラーが多く、また、週刊連載の場合だと1話あたり約70コマ相当を制作する必要があります。これを一人でやりきるのは相当ハードルが高い。なので、webtoonが発展している韓国では、この「分業制」で制作されたwebtoonが人気を博していることが多いです。
――アニメーションの制作に似ているのですね。余談ですが、どのようなキャリアを経て、LINEマンガにたどりついたのでしょう。
春木:私は前職でwebtoonを扱う電子コミックアプリの立ち上げに関わり、そこで初代編集長をしていました。それ以前はゲームの仕事をしていて、編集業務すら未経験だったんですが、新規事業が好きで(笑)。
当時はwebtoonという言葉すら浸透していない時代でしたが、56名の連載作家さんを集めるために、2000人くらいに声をかけていましたね。その後、社内スタジオの立ち上げなどを経て、LINEマンガへジョインしました。
長田:私は、映画館や映像制作会社で働いていました。
2015年に私も電子コミック業界へ転職し、そこでwebtoonのドラマ化や映画化といった二次展開の営業を担当しました。その後、webtoon編集や営業などを経験し、LINEマンガを運営するLINE Digital Frontierへ入社しました。
――そんな多様なバックグラウンドを持つお二人がいるLINEマンガ WEBTOON STUDIOが、今回「LINEマンガ webtoon大賞」という非常に大きなコンテストを実施、2026年2月15日〆切で作品を募集中です。最優秀賞の賞金1000万円というのは、webtoonの賞としては異例ではないでしょうか。
春木:おっしゃる通り、webtoonのコンテストとしては最高額レベルだと思います。最優秀賞に関しては、LINEマンガでの連載のみならず、弊社の特徴であるアメリカや韓国をふくめた、グローバルなプラットフォームで翻訳されて配信される「グローバル配信権」も付与されます。
また、優秀賞にはLINEマンガ連載権、そして、読者投票賞と特別審査員賞は読み切り掲載権が付与されます。その他の入賞者にもすべて担当編集がつき、デビューをサポートする体制をとっています。
――ここまで力を入れている理由は?
春木:圧倒的な才能、天才的な作品に出会いたいからです。もっというと、本賞をきっかけに生まれた作品が日本発webtoonの底上げに繋がることを期待しているからです。
作家主導型のぶっ飛んだ作品、求ム。
――具体的にどういうことでしょう? そもそもwebtoon市場は右肩上がりで成長しているように見えます。
春木:確かに市場は拡大していますし、その背景のひとつには、先ほどいった分業制のメリットがあります。
効率化が図れるのはもちろん、人気作の読まれ方、たとえば「何話目でどう展開すれば読者が離脱しないか」「どんなジャンルのどんなストーリーテリングが課金されやすいか」といったデータを蓄積し、作品づくりに反映させています。
ストーリーテリングやテーマ、色彩などまでふくめた、「読まれるマンガ」づくりのノウハウが蓄積されています。
――なるほど。ただ、一方で、webtoonは、 いわゆる「転生もの」や「復讐劇」などが多い気がします。
長田:スカッとする物語やヒキの強い展開があるwebbtoonは、読者の方々のニーズがあるのは確かなのですが、ただ、どうしてもジャンルに偏りが出てしまいます。
春木:たとえば、テレビアニメやアニメ映画化された『先輩はおとこのこ』(ぽむ)はLINEマンガ インディーズという投稿サービスサイトから生まれたもの。分業制ではなく、一人の作家さんが、プロダクトアウト的につくった作品なんですよ。
LINEマンガの強みは幅広いジャンルの作品を多数取り扱っている点です。私たちは、データ分析を凌駕するような「プロダクトアウト」の作品、つまり作家さんの強烈な「描きたい!」という情熱や、天才的な発想から生まれる作品もたくさん求めています。
それはテーマやストーリーだけではなく、作画表現なども同様です。かつての少年マンガで言えば、見開き一コマでドーンと必殺技を描くような表現は当時革命的だったと言われています。今では当たり前ですが、当時はコマ割りのルールを無視した斬新なものでした。
webtoonもたとえば「縦読みだからこういう表現が難しい」とか「スポーツものは描きづらい」といった声がありますが、型にはめる必要はまったくない。
むしろ、マーケットインではない作品性のものや、あっと世間が驚くような表現方法こそ、とにかくいろんなものをみてみたい。
――そうした枠からはみ出る、作家性の高い表現や作品の呼び水としても、豪華な「LINEマンガwebtoon大賞」を用意したというわけですね。
長田:そうですね。現在のトレンドという枠にとらわれない斬新なwebtoonを、LINEマンガでリリースしてみたいですね。
そして、LINEマンガで人気となったwebtoonをメディアミックス展開して、もっと日本のwebtoonの認知度を世界的に上げていくこと。これが我々の目指すところですね。
分業制スタジオによる優れた作品と共に、作家性を存分に活かした作品もどんどん増やすことで、多様なヒット作を生み出していきたいです。今年4月に「LINEマンガ編集部」を「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」として名称変更し、サイト上の作品・作家募集ページをリニューアルしたのも、同じ狙いなんです。
世界に日本発のwebtoonをより広げるために
――「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」のウェブサイトはどのように変えたのでしょう?
長田:以前からLINEマンガでは、投稿サイト「LINEマンガ インディーズ」や、完成原稿の持ち込み受け付け、マンガ賞の開催、そして分業制スタジオの立ち上げなど、様々な方法で作品や作家さんを募集していました。改めて、それらをわかりやすくアクセスできるように、リニューアルしました。
今回の「LINEマンガ webtoon大賞」自体も多くの作家さんに知っていただき、応募していただきたいですし、それをきっかけに「LINEマンガ WEBTOON STUDIO」ではさまざまなかたちでマンガ家としてデビューする方法があることを知っていただきたいですね。
例えば分業制スタジオであれば、常時クリエイター募集を行なっているので、「絵は描けないけど物語を作るのは好き」な人や、「ストーリーは苦手だけど着色のセンスは抜群」といった人たちにも、よりエントリーしてもらえる機会になったらうれしいですね。
実際、イラストレーター志望だった方が着色担当として活躍したり、子育てが一段落した方が空いた時間に線画を担当したりと、年齢や男女問わずクリエイターの裾野は確実に広がっています。
――それは埋もれた才能の掘り起こしにもなりますね。
春木: そうなんです。日本はマンガ大国なので、マンガを描きたい、マンガ家を目指していたという方はものすごく多い。すばらしいイラストを描ける方もたくさんいます。
それだけに「物語づくりができないのでマンガ家はあきらめた」「作家を夢見たが、家庭の事情で挫折した」という方もまた多い。そうした方々が、分業制スタジオならば「着色だけなら」「シナリオづくりなら」と手掛けるチャンスが生まれやすい
――副業的に参加されている方もいるのですか。
長田:いらっしゃいますね。イラストレーターをやりながら、着色をされている方。地方で主婦をしながら、ネームづくりをされている方など多々います。
春木:そうして制作の裾野も広がってきたら、さらにたくさんのwebtoon作品が生まれ、またwebtoonの作品を描きたい、ストーリーまで手掛けたいという方が増えてくる。私たちのような編集者も、これからはもっと「webtoonを読んで育ったので、webtoonの編集がしたい」という層が出てくる。すると、ぐっとwebtoon作品の底上げができ、ヒット作が生まれ、メディアミックス展開される作品も増えるでしょう。そうして横読みマンガのように、世界に冠たる日本生まれのwebtoon作品がもっと出てくる。
――「Jリーグ構想」みたいですね。日本にプロサッカーリーグができたことで、子供たちがサッカー選手に憧れ、競技人口が増え、結果としてワールドカップで戦える選手が育った。
春木: webtoonもそうした道を歩みたいです。そのためにも「webtoon作家になりたい」と子供たちが憧れるようなスター作家や、世界的大ヒット作品を日本から生み出さなければなりません。
――最後に、「LINEマンガ webtoon大賞」への応募を考えている方へ向けて一言お願いします。
長田:繰り返しになりますが、今回の「LINEマンガ webtoon大賞」ではとにかく「自由な発想」の作品が見たいです。たとえば、これまでなにかのコンテストで受賞出来なかった横読みマンガの作品でも、webtoonなら輝くかもしれない。
本賞では完成原稿部門だけでなく、ネームでの応募ができるネーム部門もあります。プロ・アマ問わず、あらゆる人に挑戦してほしいです。
春木:日本には強力なストーリーテリングの力と、魅力的なキャラクターを生み出す土壌がある。今回の「LINEマンガ webtoon大賞」をきっかけに、日本らしい、日本ならではのwebtoonが生まれ、あがて世界中の読者を熱狂させる。私たちは、そんな未来を本気で信じています。
■春木さんおすすめ作品
『癒しの魔法は必要ですか?』(脚本:みじんこ、ネーム:鹿ノ子もよう、作画:ゆに)
「12月9日からはじまった新連載です。自分の余命はあと1年しかないと知った癒しの魔法を使う主人公が、海を見るために今いる場所から飛び出て、旅の中で成長していく物語。冒険あり、アクションあり、途中で出会う傷ついた王子とのロマンスあり。読者を引き込むすばらしい脚本に加え、綺麗でリッチな作画とwebtoonならではの構図や演出が活かされていて、分業制スタジオでつくった良さが非常に出ている作品です」
■長田さんおすすめ作品
『貴方の殺人のために』(原作:seyoon、作画:JINK)
「モンスターペアレンツへの対応など学校のトラブルで悩んでいる小学校教師が主人公。ある弁護士と出会い解決を模索するのですが、彼は連続殺人犯で……というミステリー調の作品。ストーリーも作画も独特の雰囲気があって、女性の読者が多いと思うのですが、男性の私もグイグイと引き込まれ、気がついたら最新話まで買っちゃっていましたね」
■「LINEマンガ webtoon大賞 2025」
詳細URL:https://manga.line.me/lp/event/webtoontaisho2025
<応募要項>
応募条件は“webtoon”であることのみ
オールジャンルOK/モノクロOK(カラー推奨)
※完成原稿部門の場合、40コマ以上の作品の応募が必要。
※複数話の投稿の場合は、3話までを審査が対象となる。
<応募方法>
マンガ投稿サービス「LINEマンガ インディーズ」に作品を投稿してください。
マンガ部門とネーム部門で応募方法が異なりますのでご注意ください。
詳細は特設ページをご参照ください。:https://manga.line.me/lp/event/webtoontaisho2025
<選考スケジュール>
応募締め切り:2026年2月15日(日)23:59
1次選考通過作品発表:2026年3月中旬予定
読者投票期間:2026年3月中旬~4月中旬予定
結果発表:2026年5月中旬予定
<読者投票について>
応募期間終了後、編集部による1次選考を実施します。
選考を突破した作品に対して、読者が投票をする「読者投票期間」を経て一番得票数が多かった作品が、読者投票賞の受賞作品となります。
※投票方法については後日アナウンス予定。