名古屋の古本屋「シマウマ書房」店主のエッセイ集が発売 本が人から人へと渡っていく様子を描く

 名古屋市千種区にある古本屋「シマウマ書房」の日々をつづったエッセイ集『たまさかの古本屋 シマウマ書房の日々』(亜紀書房)が、2025年12月9日に発売された。

 本書は、名古屋の町に根を張る古本屋「シマウマ書房」の店主・鈴木創が、本と人との出会いを静かに振り返るエッセイ集。ぶらりと立ち寄る近所の人から、学生、作家やクリエイター、大学の研究者まで、さまざまな人が訪れる町の古本屋である「シマウマ書房」の日常のなかで交わされる小さなやりとりや、本が人から人へと渡っていく様子が丁寧に描かれた一冊だ。

 活字離れが叫ばれる時代にあっても、古本屋は新刊書店や図書館とは違うかたちで、本と読者をつなぎ続けてきた。買い取った本の埃を払い、値段をつけて棚に並べる。注文があれば梱包して発送する。特別な出来事はなくとも、同じ場所で同じことを繰り返す毎日。その積み重ねにこそ意味があるのだと、著者は語る。

 本書には、「古本屋の日々」「本をつなぐ」「生活と読書」の三部構成で、仕事のこと、読書の楽しさ、家族や暮らしについての思いが綴られている。ページに挟まれた切符、古本屋の匂い、栞やこよりといった小さな道具――本をめぐるささやかな情景が、やさしい言葉で描かれていく。

 校正者・牟田都子は、「本が人間よりも長く生きるためには、鈴木さんのような人が必要なのだ」と本書を推薦。本を売るだけでなく、本の時間を未来へ渡していく古本屋の役割が、静かに伝わってくる。

 良書は、バトンのように人から人へと手渡されていく。町の古本屋が見つめてきた20年の記録は、本が好きな人はもちろん、これから読書と出会う人にも寄り添う一冊となっている。

■書誌情報

『たまさかの古本屋 シマウマ書房の日々』

著者:鈴木 創
価格:2,200円(税込)
発売日:2025年12月9日
出版社:亜紀書房

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